変革~傷つくイケメン
由香里は僕を弄んでいる。
彼女はくすりと笑うと、
「ここでする話じゃないわね。今日お店来たらヒントあげるわよ」
そういうと僕の返事も待たずにさっさと席を立った。
――その夜。
あまり彼女のいいなりになるのは気が進まなかったが、八方塞がりの僕はとりあえずでも彼女を頼ってみるしかなかった。
店の扉を押しあけ、見まわしたが由香里の姿はまだなかった。
もやもやした気持ちを抑えつつ奥の席につき、昼間彼女の言ったことを考えていた。
「あら、来たのね」
彼女はどことなくそっけなく見えた。他の席で接客をしている間、僕は携帯をいじりながら彼女を待った。
「こんばんはー」
10分ほどして、由香里は僕の席に来た。
「おう……」
僕は少し緊張しながら彼女の言葉を待っていた。しかし彼女は何も言わず、しばらくすると理由をつけて店の奥に引っ込んだ。
僕はなぜかわからないが落胆を感じていた。
思わずためいきが漏れる。
何をやっているんだ僕は。
「どうしたの?」
顔を上げると由香里は僕を覗き込んでいた。
彼女はどうやら気配を感じさせずに近づくのが得意らしい。そろそろ慣れてきた。
「なんかあったのー?」
完全におちょくられている。
「あのさ」
僕は切り出した。
「あまり遊んでられないんだよ。どうせわかってんだろ?今大変なんだよ」
ちょっといらいらして僕は言った。
「昼間の、ヒントってなんだよ」
「怒らないでよ」
由香里は煙草に火を付けた。
「君、余裕ないわね。それがもう駄目よ」
「駄目ってなんだ。僕は焦ってるんだよ」
つとめて冷静に言ったつもりだが、彼女は満足してないらしい。はあ、と言ったきり天井を見つめている。
「それがいけないの。焦っちゃだめなの」
お店での彼女は、何倍も大人に感じられる。
「人が集まるような男が、余裕ないわけないでしょ」
「……」
「もっと肩の力を抜くの。マジメにやってますーなんて形だけ見せていてもどうにもならないわよ」
彼女がどこまで知っていて言っているのかわからないが、ストレートな物言いがいちいち心に刺さる。僕は少しいたたまれなくなってきた。
「じゃあ、仕事終わったあと付き合ってね」
僕をいたぶり終わると、彼女は席を立った。




