助走~叱咤とイケメン
充実していた。
夏の足音が近づくなか、めまぐるしく変わってきた生活に多少戸惑いながらも、僕はかすかな幸せをかみしめていた。
一度佳澄に誘われて駅前の喫茶店に寄ったことがある。
女の子と二人というのはなんだかむず痒かった。かっこつけてコーヒーをブラックで飲んだ。まずかった。
そんなある日、僕は久しぶりにおじいちゃんの夢をみた――。
○
――タケシ……タケシ……
あ、おじいちゃん……
――ばかもん!なにをひよっておる!
え?
――何を油断しておるといってるんじゃ!
なに、どういうこと?
――お前は忘れたのか。どうしてお前が生き返れたのかを。
それは……
――お前はチャンスを与えられたのじゃ。真のSクラスのイケメンとなって人を救うということを条件にな。それができなければお前の大事な人が犠牲になると。
わ、わかってるよ……
――いや、わかっておらん。そもそもお前は生き返った時、この約束をすでに放棄した生活を送っていた。そうしたらどうなったか。
え……え?
――そうよ。お前の幼馴染、亜里沙がどういう目にあったか。
おい!ふざけんなよじじい!
――ふざけているのはお前だ。いつまでも堕落した生活に身を落としているからそうなったんじゃ。
違う!くそ、亜里沙がそんなことになるくらいなら俺は生き返らなくてもよかった!どうしてこんな余計なことしてくれたんだよ……。
――タケシ……
いや、ごめん。やっぱり僕が怠け者なのが悪い……。
――タケシ……お前は優しい……お前がイケメンにならなくてはいけないんだ……お前でなくては……
おじいちゃん……
○
目が覚めると汗でびっしょりになっていた。




