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ああ、魔王  作者: 鼠騎士
1/1

…1章…

甘い話しには裏がある。麗らかなポカポカとした春の陽射しが気持ち良い午後のこと…



私は死んだ。

















どうも、ハジメマシテ。

高校3年生にして18歳の蠍座乙女 上条カミジョウ ケヤキと申しますー。


あ。上条といっても某そげぶで有名なウニヘッドさんとは一切何の関係もございませんので、悪しからず。



さて。唐突なんですがー…私、死んだんですよねー確か…

というか、アレで生きてたら逆に怖い。立派なホラーですよ。


ちなみに。死因は事故死。

でも、ただの事故死じゃないんです。


駅のホームでですね、電車を待っていたんですよ。

最近の駅って、何処も事故防止の壁(名前分からん)があるじゃないですか。

でも私が利用していた駅は古いからか…壁、無かったんですよね。


いや、近いうちに取り付け工事がある的なことは聞いていたんですよ。

ただ私にはちょっと間に合わなかったね的な。


ええ。つまり駅のホームから線路に落ちたんです。


急な突風に負けたんですよ。決して軽い筈のない私の残念な体重が。


ハッと振り向いた時にはタイミング悪く電車が来ていて…

もう…次の瞬間、目の前が騒音(+嫌な音)と共に一瞬にして真っ暗に。


気が付いたら真っ白…ではなく真っ黒な空間に倒れてました。

真っ暗で見えない筈なのに、しっかり身体(手とか)が認識出来るという謎空間です。


そして今、私の目の前には残念な頭のお兄さんが…「誰が残念な頭だ!!」


『すみません、地の分…ゲフンゲフン。私の心の中を勝手に読まないでもらえます?訴えますよ?』


「え、すみません、気をつけます…………って違ェよ!!なんでオレが謝ってんだよ!」


『個人情報保護法ってありますよね。あと住居不法侵入罪…この場合は心内不法侵入?とにかく、プライバシーの侵害です』


「ハッ んな人間のルールなんか知るか!いいか、良く聞け!オレはな…」


『人間だろうがその他だろうが関係無ぇんだよ黙って土下座でもしろよカスが』


「……………はい、すみませんでした。」ふぅ…と息を吐き、少し落ち着いてきたところで見事な土下座(若干震えてるのは何で?)をしてくれた残念兄さんを改めて見てみる。



服…なんか真っ黒というより濃い灰色のコートっぽい上着と、赤色と銀色の線が走るインナー。


靴…頑丈そうなブーツっぽい靴。なんか地味に刺々しい。あと無駄な装飾。


顔…西洋人っぽい掘りの深い顔立ち。あと赤い瞳。


頭…残念な焼け野原もとい見事なまでのH☆A☆G☆E。何があったと言いたいくらい残念な光景。



以上、これらを総合した私の意見は…















『ヴォル●モート?』


「Σ激しく違うっ!!!!」


言いながら涙をダバダバ流しながら否定され、流石に『ハゲだけに?』とは言えなかった。


いや、でも本当に似てるんだって。

鼻が低くないのと赤いインナーを除けば。

声もそっくりだし。割と情けない声色ばっかだけど。


『で?アンタは誰ですかー?』


「くそっ、なんでオレがこんな人間の小娘に…!」


『5秒以内に答えなかったらチギリ棄てる』


「Σひぃっ?!」


何をとは言わないが。


『5ー…、4ー…』


「分かった!答える!答えるから止めてぇえええっ!!!」


そう叫んで勢いよく上体を起こした彼はしかし、次の瞬間それ以上に勢いよく地に伏してビクンビクンと身体を麻痺させていた。


どうやら、とても良い具合に足が痺れていたらしい。

…少しだけカウント無しに待ってやることにした。



『………つまり。ここは負の空間ていう場所で、アンタは流れついた魂だと』


「…はい」


『アンタの生前の職業は魔王で、所謂悪役…で、勇者一行に隠密ヨロシク不意をつかれて呆気なくもピチュられたと』


「ピチュられた…という意味はよく分からんが…まぁ、大体そうだ」



1.レオドナード(残念兄さんの名前)の生前は魔王だった。

2.魔王といってもLvが低い貧弱だった。

3.世界征服なんかより魔界の発展を考えてた。

4.和平の使者を人間界に送っても行方不明者が増えるばかりで和平もままならなかった。

5.色々疲れた。

6.気配に気が付いて瞬時に頭上を見上げたら天井から勇者が剣を構えて落下してきた。

7.死者の世界で人間の魂を発見したら土下座する展開になっていた←今ここ


…整理すると、こういうことらしい。


うん。サッパリ意味分からん。


『ていうか天井から降ってくるとか最早ソレって勇者じゃないだろ。アサシンか何かだろ?』


「いや。剣は聖剣だったし、盾の刻印は確かに人間界の中央王国のモノだった…間違いなくアレは勇者だろう」


でも勇者にしては卑怯だったな…


正義より命大事な慎重派だったんだろ、心の根本から。


そんなことを言い会いながら、気付けばタメ口でそれなりに会話する中になっていた。


このレオドナード…長いからレオで。

は父親から魔王を継いだらしい。


曰く。先代までの魔王は皆実力派だけど頭が弱く単純で、力が全てという古い考えの奴らばかりだったんだとか。


それを「このままでは、いづれ魔界は滅んでしまうだろう」と考えたらしい先代魔王は先々代魔王から王位をぶん取り、人間達と平和協定を結ぼうと努力するもソレを魔王の罠だと信じなかった人間達は、勇者を召喚して打ち首(討伐)されてしまったらしい。


そんな父親の願いを叶えるべく、レオも尽力したが…歴代最弱とまで云われたレオは志半ばで瞬殺されたらしい。



…不敏だ。そんでめっちゃ健気だな、魔王親子。『まぁ…うん、頑張ったんだなお前』


お疲れ。と肩に手を置いて労う。


するとレオは再び目からダバッと涙を流し…


「ケヤキ~ッ!!オレ、オレ悔しいよぉあああ゛あ゛あ゛っ!!!」


本格的に号泣し始めた。


メンタル弱ェなオイ。

ていうか、私に悔しいと言われてもなぁ…


『あー…泣くな、泣くな。男だろ?しっかりしろ』


「うっ…ぐすっ、」


うわぁ…レオの顔が鼻水やら涙やらでとんでもないことに…

えーと、こういう時ってどうすればいいんだ?!

と、とりあえず知っている方法を使ってみよう!








『ほ、ほーら、痛いの痛いの飛んでいけー(棒読)』























「………………。」


『………………。』




















選択ミスったぁあああああッ!!!!

















とりあえず。泣き止ませることは達成出来た。


…代わりに、私の中の何かが減った気がした。

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