瞬殺の入り口
彼を振る日です、題はなんとなくで(笑)
あなたがいた日々
瞬殺の入り口
ーー文化祭当日
正直あの日が晴れだったのか雨だったのか覚えていなかった。
ただその日、地震があったことだけ記憶の片隅にあった。
あたしは間違えた選択をしたみたいで未依にはあの男はやめろと散々言われた。
確かに愛するが故に全て許してしまったこともあった。
彼がどれだけの罪人で汚れてるか、だけどあたしだけ、いや周りは逆に彼の過去を知ったぶん彼と親しくなろうと。いままではたた場の雰囲気を乱す厄介者だったけど、あのカミングアウト以来彼は人に囲まれた。
そうあたしはおかしい愚か者かもしれない。
誰を敵にしてもいい、あなたをアイシツヅケタイなんてあの頃はただ恋心だけで誓ったけど、いまではあのまま彼と深く交わらなければよかったと思うのもまた事実
3年は一番最後に歌うことになっていた。
しかもうちのクラスはくじ引きで一番はじめになった。
歌う前にあった僅かな時間、そこでクラスメイト全員+担任で円陣を組んだとき彼はあたしの正面にいた。
彼はミスの許されない伴奏者なのに、あたしと瞳があったとき笑って軽く言った。
「まぁきっとどうにかなる」
それは君が精一杯言ったあたしを落ち着かせようとした優しさ。緊張が、解けた、なのに緊張よりも嫌なものがあたしの身体に張り付いてきた。
松田の隣にはあたしの大嫌いな男。
一気に気分はブルーになるのに松田がいるせいで、その場から動けない。そこから唄い終わるまでの記憶はないに等しい。
事実はあるのに、少ししかあれから経ってないのに、まだ自分が遥か幼いときの思い出みたいな気がして。
だからきっと綴れるのは拍手が終わってからのこと。
ふらふらと脱力しながら広い体育館のステージを後にした。
そして体育館に並べられた椅子。
自分の椅子はみんなと同じである意味どれに座ってもよくて、松田の隣だって行けたのに僅かにある、恥ずかしいという感情がそうはさせなかった。
ほかのクラスの声が頭の遠くで聞こえた。
子守唄みたいに。
あたしは脱力したまま、このあとの自分を想像した。
ひとりの男を振って違う愛情を求める。
正直それに対しての彼氏への謝罪心はなかった。
アイシテルと散々言われたけど、一度も嬉しくなんかなかった。
あたしが悪いじゃない。
あたしの欲しい感情をあいつは一度も満足にくれたことはなかった。
唄が終わると、一度椅子を持って教室へ。
そしてあたしは・・・・・スガレル相手を自ら失った
ほんとうに唄い終わったら虚ろでした、ぼぅっとしてただこの後を振るのか・・・・・ってなんか他人事のようでした。