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え?魔石アウイナイトは絵の具になりますよ?

掲載日:2026/09/05

「魔石採掘だが、別の業者に委託することにした。

君は明日から来なくていい」


「それって……クビ、ってことですか」


ザルドは立ち尽くした。

ずっとツルハシやハンマー片手に、採掘業一筋だったのである。


今さら他の仕事につくなど、考えられない。


失意のままザルドは家に着くと、室内はもぬけの殻だった。


同居していた恋人が、出て行った挙句ザルドの私物ごと売り払ってしまったようである。


「ついてないなぁ、俺……」


行くあても無いので渋々故郷に帰ると、随分と寂れていた。


「いい魔石が取れなくなってな。採掘業はそろそろ潮時かね」


ザルドの父は、悲しそうにそう言う。


故郷は相変わらず、魔石獣・火山亀が頻繁に火山活動を行っていた。


この火山活動で出た魔石を売って生計を立てていたのだが、どうにもうまくいっていないらしい。


仕方なく母がやっている宿屋を手伝っていると、貴婦人が付き人をつけて泊まりに来た。


銀に近い、水色の髪の女性。


ザルドはとあることを思い出し、驚く。


「母さん!


あの人、魔石に詳しいクリスティル家の血筋のライラ・ドルーペースって人だよ!!


魔石姫って言われてる人だ!!」


「そんなすごい人が、なんでうちに?!」


ザルドと母がヒソヒソ声で盛り上がっていると、ライラがこっちにやって来た。


何か機嫌を損ねてしまったかと焦るザルド達に、ライラが口を開く。


「この地に魔石アウイナイトがあると聞いたのですが、場所を案内していただけませんか?」


「ああ、あの青い魔石ですか?


サファイアより衝撃に弱いので、価値はないと思いますが……」


ザルドの母が口をモゴモゴさせて言うと、ライラは目を見開いた。


「え?魔石アウイナイトは絵の具になりますよ?」


「「え?!」」



どうやら「真珠の顎飾りの少女」で有名な画家が好んで使う青の絵の具が、魔石アウイナイトと同じ成分だったらしい。


その画家が使う青の絵の具がなくなってしまったので、


なんとか同じものを確保して欲しい、とライラに依頼が来たようだ。


ザルドは魔石アウイナイトをハンマーで粉々にし、すり潰して加工、絵の具にしたものをライラに渡した。


「これで当面の絵の具量が確保できました。

本当にありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします」


「いやぁ、こちらこそ、新しい収入源ができました。


ライラ様は私達の命の恩人です」


ザルド達は泣いてお礼を言った。


"魔石姫''ライラ・ドルーペースが見出した魔石として、


魔石アウイナイトは注目が集まり、


各地から商人が来て買取り、宝石や装飾品として使われるようになった。


おかげでザルドの故郷は、また活気を取り戻した。


魔石獣・火山亀が頻繁に火山活動を行っているため、魔石アウイナイトがなくなる心配はない。


この地の住人たちはずっと火山亀と共生してきたので、このまま平穏に暮らしていけるだろう。


「ねぇザルド、あの時は突然いなくなってごめんね。


あなたの私物、返すわ。

私達……やり直さない?」


ある時、ザルドの元恋人が復縁をせまりに来た。


ザルドは答える。


「俺も君も、過去に戻るのはやめよう。

お互いに、今を生きよう。


俺のことは忘れててくれ。

俺も君のことは忘れるから。」


そのまま、彼女に背を向けた。


ザルドのかつての私物が、地面にぶちまけられた音が響く。


彼女の怒鳴り声や金切り声が聞こえるが、決して振り返らなかった。


ザルドは、ライラから教えてもらったアウイナイトの石言葉を胸に歩く。


「アウイナイトの石言葉は、過去との決別、って意味があるんですよ」



アウイナイトはラピスラズリと同じ主成分です。

有名な画家 フェルメールが描いた「真珠の耳飾りの少女」の少女のターバンの青は、ラピスラズリが原料のウルトラマリン・ブルー。


この話を元に話を書いたので「真珠の顎飾りの少女」という言葉が作中出てきますが、顎飾りってなんだよと、自分でも思いました。

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