1-2.河童の出る川
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バスに揺られること数十分経って、長冷川の最寄りのバス停に着いた。
川に来たのは小学生以来だった。
久々にしっかり見る長冷川は昔とは違ってガードレールに囲まれていて、下に降りるには大回りしなければならなかった。
太陽が照り返すコンクリートを歩くと、すぐに汗が額を伝う。
シュンちゃんも少し暑そうだったけど、汗はあまりかいておらず顔がうっすら赤くなっていてチークを塗ったみたいだった。
「ここに河童がいるんだっけ?」
「そう。相撲で勝つと薬がもらえるって噂だった」
「ああ、そういえばそうだっけな」
シュンちゃんが興味なさげに川沿いを歩き出す。
その背中は河童を探してるようには到底思えなかった。
彼の白いカッターシャツが眩しくて、見失わないように後ろを着いていく。
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シュンちゃんは元々転校生で四年生の時に都会からこの田舎に引っ越してきた。
でもまた中学に入る直前に転校してしまったから、一緒にいたのは数年くらいだ。
見目麗しく優秀な彼と私では全ての面で月とスッポンだったけれど、ある出来事をきっかけに少しずつ話すようになる。
くわえて家が近所だったこともあり『さあちゃん』とあだ名で呼んでもらえる仲になったのだ。
しかし、いかんせん私があまり話題が豊富ではなかったし、なんとなく恐れ多かった気持ちもあってイマイチまごまごとした仲でもあった。
シュンちゃんはあの見た目と竹を割ったような性格だから、すぐに人気者になって遠くの存在になるだろうと思っていた。
けれど意外にも彼は転校してきて数ヶ月でクラスから少し浮いた存在になった。
当時私達の小学校では怖い話が流行っていた。
子供達は皆お化けを信じていて、いわゆる心霊スポット(と言っても安全な場所)を探検することがちょっとしたブームだった。
私達のクラスも例外ではなくクラスメートのほとんどがお化けを信じ、怖い話で大いに盛り上がっていた。
そんな中、シュンちゃんはそれを真っ向から否定した。
『お化けなんているワケないじゃん。本当にそんなの信じてるの?』
『は? なんだお前喧嘩売ってんのか』
挑発的な言葉に一番に噛みついたのはクラスのボス的存在である剛史君だった。
先生が控えてたので殴り合いにこそならなかったが、剛史君はシュンちゃんを敵と見做しクラスメートの大半も渋々続いた。
何故シュンちゃんがお化けいない派を主張するのか理由はよくわからなかったけど、多分剛史君のことが気に入らなかったのだろう。
転校早々女子からチヤホヤされていたシュンちゃんを、それだけで敵視していた男子も少なくなかったけど、剛志君はシュンちゃんを人一倍敵視していたのだ。
剛史君との険悪さは、シュンちゃんに密かに好意的だったクラスメート達をも遠ざけてしまった。
それでもシュンちゃんが一人でいる姿は、孤独というよりも孤高という言葉が似合っていて、彼の美しさに拍車をかけているように見えた。
私も何度か声をかけようとしたけど、同情されたと勘違いした彼から突き放されそうで迂闊に声を掛けられないでいた。




