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4-3.そうして


 シュンちゃん達が再び引越したのは、彼が中学に入る前のことだった。

 簡単に言うと両親の仲が悪化して別居することになったそうだ。


 シュンちゃんのお母さんは、シュンちゃんを連れて都会の実家へ戻る事に決め、シュンちゃんのお兄さんは県外の大学進学を理由に一人暮らしをする事にしたらしい。

 県外に就職していた義姉さんもこれを機に一人暮らしを決め、義父さんは会社の近くに越したそうだ。


「仕事を増やした母さんとは顔を合わせる時間が減って、祖父さんとほぼ二人で暮らしみたいなもんだったけど楽しかったよ。俺はじいさんが好きだったから。けど、こないだ、祖父さんが、死んだんだ」


 私はまだ人の死に触れたことがなくて、なんと言ったらいいかわからなかった。

 ご愁傷様です、と恐々述べると、シュンちゃんは「そんな感じじゃねえよ」と言った。

 お祖父さんは途中から施設に入っており、九十超えの大往生だったそうだ。


「祖父さんは変わってて天邪鬼な性格だった。子ども嫌いっつーか、うるさいのが嫌いだったな。だからハツラツとしてて元気のいい兄貴やいとこより、物静かな俺のことをよく褒めた」


 そう話すシュンちゃんの表情は優しくも悲しそうだった。


「お前さ、不思議じゃなかった? そもそも最初俺がなんでお化けいない探検しようって言い始めたのか」

「剛志君への意趣返しかと思ってた」


 そう言うとシュンちゃんはククッと笑う。


「ああ、あいつには悪いことしたな。たしか小学生のころ亜里沙⋯⋯のことが好きで俺につっかかってきたんだよな」


「⋯⋯知らなかった」


「気づいてなかったの、多分クラスでお前だけだよ。でも別にアイツのせいじゃない。俺、むしろ小一の頃までお化け信じてて怖かった。でもちょうどお前と会う前くらいかな。祖父さんが幽霊がいないって、証明してくれたから平気になったんだよ」


「どうやって証明したの?」


「見たらしぬっていう動画を一緒に見て、しなないことを証明してくれた」


 果たしてそれは証明になるのだろうかと思ったが、少なくとも幼かったシュンちゃんは勇気づけられたらしい。

 それ以来、シュンちゃんはお化けや呪いなんてのはないって思うようになったし、祖父に倣って非科学的なものを信じない主義になったのだ。


 しかしそんな幽霊を信じない主義のもとになった祖父さんだけれど、一回だけ幽霊認める発言したことがあったという。


「祖父さんがインフルエンザで寝こんだ時の話だよ。祖父ちゃんがしんじゃうって泣きじゃくったの覚えてる」


 実際には薬もよく効いていて大したことはなかったけど、シュンちゃんは心配で部屋の前を離れなくて、お母さんも宥めるのが大変だったらしい。


 そんなシュンちゃんに、お祖父さんは「もししんでも幽霊になって会いに行ってやるから大丈夫だ」と言った。

 お祖父さんの言葉はシュンちゃんを慰めるためのものだったけど、お母さんは縁起でもない! と怒ったし、シュンちゃんは結局もっと泣いてしまったそうだ。


「あんだけ非科学的な物は信じない、幽霊なんていないって主張しといて、急にそんな鞍替えすんのかよって感じだろ?」


 シュンちゃんは呆れたように懐かしそうに話す。

 けれど私は会った事のないお祖父さんの気持ちが手に取るようにわかるようだった。

 自分のために泣く彼が可愛くて、なんとかしてあげたかったんだろう。


「そんな事言ってたの、すっかり忘れてた。でも祖父さんが亡くなった途端急に思い出して⋯⋯もしかしたら何処かで会えるんじゃないかって、心霊スポットとか墓とか一人で行った。でも全然幽霊なんて出ない。当然だよな。幽霊なんて、いるワケないんだから」



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