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3-7.異世界山



 その後、当然私達は探しに来た大人達に盛大に怒られた。


『本当に心配したんだから⋯⋯!』


 私を見つけた母はものすごい形相で私の身体をさすって怪我がないか確かめた。


 母の姿を見て驚いた。

 いつも綺麗に一つに結われてる髪の毛はボサボサで、顔と首元に汗で髪が張りついている。

 初めて見る母の乱れまくった風貌に、私は申し訳ないという気持ちよりも驚きが勝ってしまっていた。

 母は私の両肩を掴み、キッと目をつり上げた。


『お母さんダメって言ったわよね? どうして、こんな遅くまで山なんかで遊んでたの』


 その厳しさはいつものように冷静だったけど、私は身が固まってしまった。蛇に睨まれた蛙、というのも変な話だけど、それほどに母の眼力はすごかった。


 そんな私たちの様子に気づいたのかシュンちゃんが急いでやってくる。


『おばさんごめんなさい。僕が』


 彼が何を言おうとしたかすぐにわかって、私は咄嗟に母の腕にすがりついた。


『わたし! 私が夜、お化けが見れるって聞いて、行ってみたくて、誘った。一人じゃ怖かったから⋯⋯』


 出した声は微かに震えていた。

 多分、初めて吐いた大人への嘘だった。


 私の告白に場がシンと静まり返る。

 母は私を見据えた。


『そう⋯⋯。あなたの書置きがあったから、こうやって見つける事ができた。その点は偉かったね。でも、友達まで巻きこんで、皆に迷惑かけて。悪い事は悪い』


 パンっと音がして、気づいたら尻餅をついていた。頬を叩かれたのだと遅れて気づく。頬がじんわりと熱を持つ。少し痛かったけど、自分が周りの人にたくさん迷惑と心配をかけたとわかってたので、甘んじて受け止める事にした。


 (でもお母さんは少し大袈裟だ。そもそもこの山は子ども達だけで天体観測できるような場所なのに)


 自分が悪いのに少し不貞腐れたような気持ちで顔を上げると、母と目が合った。


『本当に、見つかって良かった⋯⋯』


 独り言のように小さく呟いた母の声は泣く寸前みたいだった。

 そんな声が母に存在しているなんて、私は今の今まで知らなかった。


『ごめんなさい』


 意識なく出た謝罪の後に瞬きをすると、鼻が熱くなった。

 そして頬に一粒、二粒、水滴が落ちる。


 気づくと自分が泣いていた。


 母の性格から流石に二発目はないだろうと私はわかっていたが、周りは母の気迫にそう思わなかったらしい。

 座りこんだ私に、呆然としていたシュンちゃんがハッとして母を止めに入る。


『おばさんやめて! 本当に僕が誘ったんだよ!』


 私は叩かれた事よりも泣いた事よりも、嘘がバレないかの方が心配だった。


 でもそれは結果的に杞憂だった。


 シュンちゃんが自分のせいだと主張すればする程、周りは彼が私を庇っているように思った。

 それはむしろ願ったり叶ったりだったけど、シュンちゃんの目は罪悪感からか終始ウルウルと潤んでいて、最後には泣いてしまった。


 私は今日のこの一連の行動が間違ってたんだとやっと気づいた。


 ーーーそうして父とシュンちゃんのご両親達が母を宥めて漸く騒動に区切りがついた。


 母はシュンちゃんのご両親に何度も深く頭を下げて、父も慌てて後に続く。

 平謝りする母達に、シュンちゃんのご両親は、『いえいえ、こちらこそ女の子がいるのに止めずに申し訳ありませんでした』と、なぜかホッとしたよう謝った。


 それは今回の騒ぎがシュンちゃんのせいじゃなくて良かったという安堵に見えた。



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