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3-4.異世界山


 山に入り、固い土と砂利だらけの登り道を歩き始める。少し経ったところでシュンちゃんが私を振り返った。


『大丈夫?』


 彼は未だ疲れてないのか早足で常に私より先を歩いていた。平気だと頷くと彼は優しく笑った。


『多分、もうすぐだから』


 私を気遣うその声はなぜかいつもより明るくて優しいのに、私を言いようのない不安にさせた。

 いつもと様子が違う事くらいわかっていて、見ないふりをしている。


 今までの探検のように、あーあ、なんだ何もいなかったねって言いつつ、内心悪くなかったって思ってるような、実はそれを期待してたような、そんな雰囲気じゃない。

 どこか切実で、必死なんだ。


 ”どうしたの、何かあったの?”


 そう、聞けばいいのに、その一言がすごく重い。

 らしくなくジリジリと低音やけどみたいに焦る気持ちがわいてくる。木々の隙間から入る日は朱を通りこしていて、青白さを帯び始めていた。


 そうだ。次、シュンちゃんが足を止めたら、その時聞こう。

 自然に。

 疲れだけじゃない理由で鼓動が早くなる。周りは気を取られている内に、木々の緑と茶色で前も後ろもほとんど同じ景色になっていた。


 そんな中で前を歩くシュンちゃんの白いスニーカーだけがやけに浮いて見えた。


 不意にその白がピタリと止まった。


『⋯⋯シュンちゃん、』


 想像よりも早く訪れたチャンスに声が上擦る。

 呼びかけた背に反応はない。彼の後ろ姿は少し上の何もない空間を見ているように見えた。

 もしかしたら何かあるのかも知れないけど私のいる所からは何も見えない。


 シュンちゃんの元へ駆け寄る。すると何もないと思って見上げたそこに、何か違和感を感じた。


 そして気付いた。切れ目だ。切れ目が、目の前にある。

 木と木が続くこの景色に、カッターで真ん中に線を引いたみたいな切れ目がある。切れ目のふちは卵の殻を割った時のように亀裂が入って、周囲の景色が歪んで見えた。


 まさか、これが、本当に異世界の入口⋯⋯?


 信じられない気持ちでシュンちゃんを見る。

 すると今まで動かなかった彼がその切れ目に手を伸ばした。

 瞬間、閉じていた瞼のようだった切れ目が薄目を開けるようにうっすら開く。切れ目の幅が細くて暗くて中はよく見えない。無意識に目を凝らすと、合わせるようにゆっくりゆっくりと開いていく。


 それは何か生き物が目を覚ます前触れ、そのものだった。


 ざわりと肌がそば立つ。


 何かが、出てくるーーー





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