3-3.異世界山
異世界山のどこかに満月になると異世界への入口が現れる。
そんな話が昔からこの地域に伝わっていた。
正確な場所は誰にもわからないが、山の中腹辺りで見た人がいるらしい。入口の正確な特徴は誰も知らないが、見つけた人は不思議とそれが入口だとわかるそうだ。
異世界の入口は望む人の前にしか現れず、入ると二度と元の世界には戻って来れない。
異世界がどんなものなのか私は知らないが、噂ではこの世とは異なる世界線をたどった世界であるとも言われていた。
シュンちゃんと合流し異世界山へ向かう。
山への道のりは家から子どもの足で四十分程かかる場所にある。
私は体力がある方なので平気だろうが、シュンちゃんは体力があまりないので少し心配だった。
しかし今日のシュンちゃんは疲れを感じさせない足取りで迷いなくどんどん歩いていく。
いつもならバテている頃なのに、と不思議に思いながらも彼の後を追う。
私たちは入り口の一つである、畑の奥にある細い砂利道を通って異世界山に向かった。
異世界山へは5歩くらいで渡りきれるくらいの小さな橋を渡って入ることができる。
橋の下には小さ過ぎて小川とも呼べないくらいの川が流れていて、昔は沢山の蛍を見る事ができた。
私も幼稚園の頃、父とも何回か見に来た事があった。
しかし年々蛍の数が減っていてもう見れないと聞いてからは来ていなかった。
⋯⋯あの蛍達はどこに行ったんだろう。
橋の上から小川をそっと覗いてみる。
小川は時間を止めたように静かで、薄暗くて、よく見えない。橋は三メートル位の高さで、辺りはまだそこまで暗くないのに、なぜ見えないのか不思議だった。
急に下までどうにかして降りてみたいと思った。
ジャンプしたら案外無事に降りられるんじゃないかという、普段なら考えない思考が、頭を過ぎた時だった。
『さあちゃん』
シュンちゃんの声だ。
顔をあげると、彼は既に橋の向こうにいた。
そうだ。こんな事をしている場合じゃない。
目が覚めた気分だった。
『今行く!』




