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3-1.異世界山
「⋯⋯あと行けて一ヶ所だな」
「そうだね」
”綺麗な幽霊屋敷”を後にして、シュンちゃんと二人停留所で脚を休める。
行く宛が決まらずいくつものバスを見送り、いつの間にかもう夕方だった。夏なので夕方でも日がまだ高い。
「なぁ、お前はどこ行きたい?」
シュンちゃんが私のスマホを見ながら呟く。
彼のスマホは制限がかかってしまったとかで、先ほどから私のを使っている。
シュンちゃんと探検した場所は沢山あった。
口裂け女が出ると言う曲がり四辻。
木の下に現れると言う幽霊。
影だけが歩く高架下。
行くと誰かに呼ばれる森。
消える釣り人のいる池⋯⋯。
頭をよぎる候補地は沢山あったけど彼の中で答えは決まってる気がした。
「⋯⋯異世界山」
シュンちゃんの言って欲しそうな答えを言ってみる。
彼はスマホを触る手をぴたりと止めて、こちらを見る。
「いいね」
そう言って私に薄く笑ってみせる。
その顔はどこか危うさを含んでいて、怖いくらい綺麗だった。




