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2-6.綺麗な幽霊屋敷


 亜里沙ちゃんは、『最後だし話そ』と、私の袖を引っ張る。


 私は当時仲良かった数少ない友人とささやかながら謝恩会に向かう途中だったのだが、友人達はきらびやかな彼女に圧倒され、あっさり私を置いていった。



『ずっと聞きたかったんだけど沙夜ちゃんは昔何でシュンと一緒にいたの? 男として好きだったの? てかシュンに好かれてたの?』


 矢継ぎ早に言う彼女に面食らう。

 意外にもそこに昔のようなピリッとした意図は含まれておらず、ただ心底本当に不思議だ、というようだった。


 私は何と答えようか考えた。

 昔よりは言語化能力が上昇したとは思うけど、自分の行動動機について考えるのは久しぶりだ。


『何というか』


『うん』


 亜里沙ちゃんのクリっとした目が興味深そうに開く。


『例えば、道にすごく綺麗な宝石みたいな石を見つけたら、とりあえず拾って大切にしなきゃって思う気持ちに近い、かな』


 静寂が流れる。

 そして亜里沙ちゃんは一巡した後きっぱりと言った。


『いやゴメン全然わかんない』


『あ、でももしその石が元の場所に戻して欲しいとか行きたい場所があるとか言ったらそれに従うつもりだけど』


『待ってホント何の話? あーもういいや』


 亜里沙ちゃんは呆れたように顔の前で手を振る。

 言語化能力が上昇したと思ったのは自惚れだったようだ。


『なんか上手く話せなくて申し訳ない。昔よりは賢くなった気でいたんだけど勘違いだったみたい』


『学年十位以内キープに言われると嫌味なんだけど?』


『いや、確かに勉強は頑張ったつもりだけど、昔からズレてるというか、感覚が少しおかしいみたいな自覚はあるよ』


『そこは否定しないけど。なんていうか沙夜ちゃんて毒気抜かれんだよね。だから昔シュンも一緒にいたのかなー』


 亜里沙ちゃんは懐かしげにそう言って長くてカールされたまつ毛を伏せた。


『今だから言うけどシュンの家、結構複雑だったじゃん。中学入る前にまた転校したのも、家が原因だったみたいだし⋯⋯』



 シュンちゃんの家はお父さんとお母さんとお姉さんとお兄さんとシュンちゃんの五人家族で、彼が小学校四年の時に再婚を機に引っ越してきた。

 シュンちゃんはお兄さんとお母さんとは血が繋がっていたけど、お姉さんとお父さんとは血が繋がっていなかった。


 私は近所のおばさんが玄関で母にそう話すのを耳にして初めて知った。

 母はおばさんの話をにこやかに聞いていたけど、その笑顔は貼り付けたようだった。

 当時の私は本当にモノを知らなくて、血の繋がらないお姉さんやお父さんというのがよくわからなかった。なのでそれはどう言う事なのかと問うと、母はいつになく厳しい表情をした。


『他人の家の事情を面白半分に興味を持つものじゃない。大体それを聞いてどうするの、あなたの中で何かが変わるの?』


 自分だって聞いていたのに、と思ったが母の圧に何も言えなかった。

 それに決して面白半分で聞いた訳ではなかったけど、確かに聞いたところでシュンちゃんの美しさは変わらないなと納得したので当時の私はそこで考えるのをやめたのだ。




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