2-4.綺麗な幽霊屋敷
”綺麗な幽霊屋敷”は大きな門とフェンスでぐるりと囲まれた中にあった。
門は海外の豪邸屋敷で見たことがあるような
黒い鉄格子がついていて、鍵がなければ絶対に開きません、という顔をしていたが、亜里沙ちゃんの言う通りに思い切り体当たりすると簡単に開いた。
『さあちゃんって、意外に力すごく強いよね⋯⋯』
シュンちゃんの顔は若干引きつっていたが、褒められたのが少し誇らしい。
それほどでも、と礼を言うと彼は既にその場におらず、代わりに亜里沙ちゃんが氷のような眼で私を見ていた。
『何喜んでんの? 褒められてないから。沙夜ちゃんはシュンから見たらゴリラみたいってことなんだからね!』
そう言って私に指を突きつけた瞬間、亜里沙ちゃんの爪が私の腕にバシッと当たった。
『あっ』
彼女はすぐさま手を引っ込めたが、私の手首にはうっすら血が滲んでいる。どうやら桜貝のような爪がうっかり当たったらしい。
『どうした?』
来ない私達の様子を見にシュンちゃんが戻って来る。
『あ、亜里沙、悪くないから! 悪いのはそっちだから!』
そう言って亜里沙ちゃんは少し焦りながら早足で先に行ってしまう。
『⋯⋯何? 何かあった?』
私はなんとなく手首を隠した。
『ううん、何でもない。私たちも行こ』
門の中に入り、初めて幽霊屋敷をしっかり見る。
日当たりも良い場所なのに、どこか冷たい雰囲気が漂う場所で、家なのに人がいない温度感というもの音如実に現れていた。
『あのね、ここにいる女の幽霊に手を振られると呪われるって噂だけど、実は他にも言われてる事があるの〜!』
亜里沙ちゃんは来る前の『守ってね』発言とは裏腹に、この家の怖い幽霊のたくさんの噂を話してみせた。
手を振られた人はこの家に閉じこめられて皆に忘れられる、家から出られなくなる、頭がおかしくなる⋯⋯。よくよく聞くと全部似たような話だった。
でも家そのものに呪われてるのか、そこにいる女の人が呪われてるのかどっちなんだろう。
『あ』
それまで黙って辺りを見渡していたシュンちゃんが何かに気づいた。
『窓、開いてる』
件の2階の窓が開いていて白いカーテンが靡くのが目に入った。
生ぬるい風がカーテンを小さく揺らす。瞬間、横にいた亜里沙ちゃんの喉がヒュッと鳴った。
『は、や、え、うそ』
『嘘じゃない。ほら、あっち』
シュンちゃんが指を指すと、亜里沙ちゃんの顔から色がサァッと引く。
その時だった。一際強く風が吹いて白いカーテンが一層強く揺れる。
はためくカーテンの波間に人影が見えた。
人影を見たのは、初めてだった。
人影の片腕がゆっくりと上がる。女性の腕だと思った。そして手を振るんだと思った。
噂を目の当たりにして呆然としていると、亜里沙ちゃんが目を見開いて叫んだ。




