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0.プロローグ


 幼馴染だったシュンちゃんが急に現れた。


「久しぶり。犬飼沙夜⋯⋯だよな?」


 そう言って目の前の制服姿の美しい青年は少し首を横に傾けて微笑む。

 私はもちろん犬飼沙夜だったので頷いた。


 高校二年の長かったテスト期間がやっと終わった、暑い夏の土曜の午後。制服のまま庭のきゅうりを収穫していた時のことだった。


「小6ぶりか? まだ家庭菜園やってんだ。お前、本当きゅうり好きだね」


 借家の小さい家に申し訳程度につけられた庭とも言えないスペースに、シュンちゃんの優しげな視線が向けられる。


「昔、『お化けいない証明探検』したじゃん。それで行った所が今はどうなったのか急に気になってさ」


 『お化けいない証明探検』は、お化けを信じないことを主義にした探検だ。

 遭遇しない事を前提に探検して、その噂を嘘と証明する、シュンちゃんが発案者の逆張りの探検だった。


「俺、今日一日で行けるだけ行こうと思うんだけど、沙夜も行く?」


 シュンちゃんは小学生の頃の同級生だ。

 引越しが多い彼とは3年間くらいしか一緒にいれなかったけど、私は彼とは仲が良いつもりだった。


 けどそれは誤解だった。なぜなら引越し後に送った手紙の返事が来たことは一度もなかったから。

 私は己の思い上がりを恥じた。


 ⋯⋯そんな過去があるのに、なんて自由かつ、勝手な提案だろう。

 彼を見れば、そんな過去なんてまるでなかったかのように、天使の微笑みを浮かべている。


 答えは決まっていた。



「もちろん、行きます」


 突然どうしたとか、返事を一度もくれなかったのに今更なに? という当然の疑問はこの際重要ではない。

 昔から彼の声は私にとって鶴の一声なのだ。

 私の即答にシュンちゃんはどこか得意気な表情をした。


「それでどこ行くの?」


 シュンちゃんが私の手にしたきゅうりを見る。


「じゃ、まずは河童探しだ」




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