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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第9話 その視線、全部私に向けないでください

第9話「誰のもの」


任務から戻った翌日。


公爵邸の空気は、さらに変わっていた。


(……完全に広まってるわね)


廊下を歩けば、視線が集まる。

昨日までの“警戒”ではない。


明確な――評価。


「リリアーナ様、おはようございます」


使用人が、はっきりとした敬意を込めて頭を下げる。


「おはようございます」


(扱いが上がるのは楽でいい)


「リリアーナ様!」


明るい声。


振り返ると、ルークが駆け寄ってくる。


(またこの子)


「おはようございます」


「昨日の任務、聞きました!すごかったですね!」


ぐい、と距離を詰めてくる。


(本当に近いわね)


「アルヴェルト様とお二人で地下まで――」


「噂は早いですね」


「そりゃもう!」


にこにこと話し続ける。


悪気はない。

むしろ、純粋に尊敬しているのが分かる。


(こういうタイプは嫌いじゃない)


「もしよければ、今度剣の指導を――」


その時。


「ルーク」


低い声。


空気が、凍る。


(来た)


振り返る必要もない。


「……アルヴェルト様」


ルークの声が一瞬で固くなる。


「任務報告は終わっているのか」


「い、いえ、これから――」


「なら先に済ませろ」


(遮断、早いわね)


「は、はい!」


ルークは慌てて一礼し、その場を離れた。


(逃げた)


「……忙しそうですね」


何気ない調子で言う。


アルヴェルトは無言でこちらを見る。


その視線が、わずかに鋭い。


(ああ、完全に)


「何か?」


「無駄な会話だ」


短い言葉。


「交流の一環ですが?」


「不要だ」


即答。


(強いわね)


「随分と排他的なのですね」


「当然だ」


一歩、近づいてくる。


「任務に関係のない接触は控えろ」


(……そこまで言う?)


「命令ですか?」


「……」


一瞬の沈黙。


「……違う」


だが、すぐに続く。


「だが、従え」


(ほぼ命令ね)


「……リリアーナ」


名前を呼ばれる。


低く、はっきりと。


(珍しい)


「はい」


「お前は」


言いかけて、止まる。


(またそれ)


少しだけ、距離を詰める。


「何でしょう?」


真正面。


逃げ場のない距離。


すると――


ほんの一瞬だけ、彼の視線が揺れた。


「……余計なことに時間を使うな」


(言い換えた)


「それは私の裁量では?」


「違う」


即座に否定。


その声が、わずかに低くなる。


「お前の時間は、俺が使う」


(……ああ)


来た。


これはもう。


(言ってるわね)


「それは、随分と独占的ですね」


少しだけ、笑いを含ませる。


その瞬間。


「……悪いか」


間髪入れずに返ってきた。


(認めた)


思わず、目を細める。


(面白い)


「では一つ、確認させてください」


「何だ」


「私は――」


ほんの少し、間を置く。


「あなたの所有物ですか?」


沈黙。


空気が止まる。


数秒。


長い、沈黙。


(さて)


彼の答えを待つ。


すると――


「……違う」


低い声。


だが、そのまま続く。


「所有物ではない」


(へえ)


「だが」


一歩、踏み込んでくる。


距離がゼロに近づく。


「他の誰のものでもない」


(……それ)


ほぼ同義よね。


思わず、息が止まりそうになる。


(危ないわね、この人)


「……分かりました」


小さく頷く。


「では、気をつけます」


「そうしろ」


短い返答。


だが、その声はわずかに落ち着いている。


(満足したわね)


そのまま歩き出す。


並ぶ。


距離は、自然と近い。


(もう隠してない)


廊下の向こうで、使用人たちがこちらを見る。


そして――


気づいている。


(完全にバレてる)


視線が、変わっている。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「周囲の目、気になりませんか?」


「気にする必要はない」


即答。


(強い)


「私は少し気になりますが」


「慣れろ」


(雑)


少しだけ、沈黙。


その後。


「……リリアーナ」


また名前を呼ばれる。


「はい」


「さっきの話だが」


(さっき?)


「他の男に近づくな」


はっきりとした言葉。


(追撃来たわね)


「命令では?」


「……」


一瞬の間。


「……忠告だ」


(言い直した)


「では、参考程度に」


軽く返す。


その瞬間。


「……お前は」


低く、少しだけ苛立った声。


(あ、珍しい)


「冗談です」


すぐに引く。


すると――


わずかに、空気が緩む。


(扱いが分かってきた)


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「少しだけ」


横を見ずに言う。


「嬉しいです」


「……何がだ」


「内緒です」


それ以上は言わない。


けれど――


隣で、彼の歩幅が一瞬だけ乱れた。


(効いた)

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