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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第8話 守ると言われた瞬間、逃げ場がなくなった

第8話「近すぎる距離」


その任務は、予定外だった。


「地下調査だ」


アルヴェルトは地図を広げながら言った。


「先日の魔導師の拠点。その下に、まだ何かある可能性が高い」


(……残党か、仕掛けか)


「危険度は?」


「不明だ」


(つまり高いわね)


廃屋の地下へ続く階段。


石造りの壁は湿り、空気が重い。


足音がやけに響く。


(……魔力が濃い)


昨日よりも、明らかに。


「気をつけろ」


アルヴェルトの声。


「離れるな」


(命令口調が増えてるわね)


「努力します」


わざと少しだけ軽く返す。


すると――


ぐい、と腕を引かれた。


「努力では足りない」


(……近い)


そのまま、手を離さない。


(もう隠す気ないのね)


最下層。


広い空間に出る。


そこには――


「……魔導陣」


床一面に刻まれた、巨大な陣。


黒く、歪んだ線。


(……嫌な構造)


「起動しかけているな」


アルヴェルトが剣を構える。


その瞬間。


びり、と空気が裂ける。


魔導陣が光った。


「――来るぞ」


影が、形を持つ。


黒い塊が、人型へと変わる。


魔力で構成された擬似生命体。


(厄介ね)


「後ろにいろ」


「無理です」


即答。


「干渉しないと増えます」


「……分かっている」


短い舌打ち。


(許可、ね)


一体が突っ込んでくる。


速い。


だが――


(直線)


私は一歩下がる。


その瞬間。


アルヴェルトが前に出る。


剣が閃く。


一刀で、消滅。


(やっぱり強い)


だが、次々と湧いてくる。


「……面倒だな」


「核を壊します」


私は魔導陣を見る。


中心。


あそこだ。


(でも――)


距離がある。


「行きます」


一歩踏み出す。


その瞬間。


影が横から襲いかかる。


(――間に合わない)


そう思った刹那。


強く、引かれた。


「言ったはずだ」


低い声。


気づけば、背中が彼の胸に当たっていた。


完全に、抱き寄せられている。


「離れるな」


(……これは)


かなり、近い。


というか――密着。


(心臓の音、聞こえそう)


一瞬だけ、思考が止まる。


だが――


(今はそれどころじゃない)


「三秒ください」


「守る」


短い返答。


(頼もしいこと)


魔力を集中。


周囲の音が遠くなる。


アルヴェルトの動きだけが、近くにある。


(……すごい)


彼の剣は、無駄がない。


完全に、防御と殲滅を同時に行っている。


(だから任せられる)


私は陣に干渉する。


構造を読み解く。


(……単純じゃない)


だが、解ける。


指先に力を込める。


「――解体」


光が走る。


魔導陣が、軋む。


影たちが揺れる。


「今です」


その瞬間。


アルヴェルトが踏み込む。


一直線。


核へ。


そして――


一閃。


すべてが、止まった。


魔導陣が崩壊する。


影が消える。


静寂。


「……終わったな」


低く、息を吐く声。


(ええ)


私は頷こうとして――


(……あ)


まだ、離されていない。


むしろ、さっきよりしっかり抱き寄せられている。


(……これは)


完全に、距離ゼロ。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「もう安全です」


「……そうか」


だが、手は離れない。


(あえて、ね)


「離していただけますか?」


一拍。


ほんのわずかな間。


「……ああ」


ようやく、腕が解かれる。


(遅い)


少しだけ、距離が空く。


けれど――


(さっきより近い)


目線が、正面で合う。


沈黙。


数秒。


「……怪我はないか」


先に口を開いたのは、彼だった。


(……やっぱり)


「ええ。守っていただいたので」


事実をそのまま言う。


「当然だ」


即答。


(当然、ね)


「私だからですか?」


ほんの少しだけ、踏み込む。


すると――


彼の視線が、わずかに揺れる。


「……違う」


だが、その声は低い。


「任務だ」


(はいはい)


「そういうことにしておきます」


軽く笑う。


その瞬間。


「……あまり、無茶をするな」


ぽつりと落ちる言葉。


(またそれ)


でも――


さっきより、確実に柔らかい。


「努力します」


「だからそれでは足りない」


(同じ会話ね)


でも、違う。


(距離が)


確実に、変わっている。


地上へ戻る。


夕暮れの光。


空気が軽い。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「先ほどの件ですが」


少しだけ、間を置く。


「守っていただいて、ありがとうございました」


素直に言う。


すると――


ほんの一瞬だけ、彼の足が止まった。


(……効いた)


「……当然だ」


同じ言葉。


でも――


その声は、少しだけ違っていた。


並んで歩く。


今度は、触れてはいない。


けれど。


(……さっきより近い)


距離が、自然に縮まっている。


(これはもう)


否定できない。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「次も、守っていただけますか?」


半分、冗談。


半分、本音。


沈黙。


数秒。


そして――


「……ああ」


短い返答。


だが、それだけで十分だった。

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