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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第5話 一緒に戦え――初めて守られた日

第5話「守る理由」


公爵邸を出たのは、まだ日が高い時間だった。


石造りの街並みを抜け、王都の外縁へと向かう。


「結界の不具合の原因を探る」


アルヴェルトはそれだけ告げた。


(簡潔ね)


「外部からの干渉、ということですか?」


「その可能性が高い」


隣を歩く彼の足取りは、無駄がない。


私はその半歩後ろを歩きながら、周囲を観察する。


(……魔力が薄く歪んでる)


目に見えない違和感。


普通の人間なら気づかない程度の、微細な揺らぎ。


「この先です」


私がそう言うと、アルヴェルトが足を止めた。


「分かるのか」


「ええ。微弱ですが、流れが集中しています」


数秒の沈黙。


「……案内しろ」


(素直ね)


辿り着いたのは、人気のない廃屋だった。


崩れかけた壁。割れた窓。

人の気配はない――はずなのに。


(いる)


中から、微かに魔力が漏れている。


それも、明確な“悪意”を帯びたもの。


「中にいます」


「分かっている」


アルヴェルトは短く言い、扉に手をかける。


「下がっていろ」


「嫌です」


即答した。


彼が、わずかにこちらを見る。


「足手まといになる」


「なら、ならない動きをします」


視線を真っ直ぐ返す。


一瞬の静寂。


(ここで引いたら終わり)


「……勝手にしろ」


ため息混じりの許可。


(通った)


扉が開く。


その瞬間。


「――来たか」


低い声。


室内の奥、黒いローブの男が立っていた。


その周囲に、歪んだ魔導陣。


「結界を弄っていたのは貴様か」


アルヴェルトが一歩前に出る。


男は、くくっと笑った。


「気づくのが遅いな。“氷の公爵”」


(……厄介そうね)


魔力の質が、普通じゃない。


雑だが、量が多い。


「排除する」


アルヴェルトが踏み込む。


一瞬で距離が詰まる。


(速い)


剣が閃く。


だが――


「甘い!」


男の足元の魔導陣が光る。


次の瞬間。


爆発的な魔力が弾けた。


「っ――!」


衝撃波。


視界が揺れる。


(まずい)


防御が間に合わない。


その瞬間――


ぐい、と体を引かれる。


「動くな」


低い声。


気づけば、アルヴェルトの腕の中だった。


彼が前に立ち、衝撃を受け止めている。


(……守られた)


爆風が収まる。


だが、男はまだ笑っている。


「どうした?それだけか」


(このままじゃ長引く)


アルヴェルトは強い。

けれど、あの魔導陣がある限り厄介だ。


(なら)


一歩、前に出る。


「リリアーナ、下がれ」


「無理です」


「――」


「三秒ください」


短く言う。


彼の動きが、わずかに止まる。


「……何をする気だ」


「終わらせます」


(説明してる時間はない)


地面に手をつく。


魔導陣の構造を“読む”。


(やっぱり、雑)


だからこそ――壊せる。


指先に魔力を集中。


「――干渉開始」


光が走る。


男の魔導陣が、びくりと揺れる。


「なに……!?」


「そこです」


アルヴェルトにだけ聞こえる声で告げる。


次の瞬間。


彼が動いた。


一閃。


魔導陣の核ごと、男を切り裂く。


静寂。


重たい音とともに、男が倒れた。


魔導陣が消える。


空気が、元に戻る。


(……終わった)


私はゆっくり立ち上がる。


その瞬間。


腕を掴まれた。


「無茶をするな」


低く、押さえた声。


アルヴェルトだった。


その手に、わずかに力がこもっている。


(……怒ってる?)


「合理的な判断です」


「違う」


即座に否定される。


「危険すぎる」


真っ直ぐに見下ろされる。


その瞳は、冷たいはずなのに――


どこか、違う。


(……ああ)


これ。


「……心配、していただけたんですか?」


わざと、少しだけ柔らかく言う。


一瞬、沈黙。


「……勘違いするな」


視線が逸れる。


(分かりやすい)


「戦力が減ると困るだけだ」


「そういうことにしておきます」


小さく笑う。


すると、彼は軽く舌打ちした。


「……戻るぞ」


手は、離れないまま。


(……離す気ないのね)


そのまま歩き出す。


夕焼けの中。


繋がれたままの距離。


ほんの少しだけ――近い。


(悪くない)


胸の奥に、わずかな変化。


それはまだ、名前のつかない感情。


けれど確かに。


何かが、動き始めていた。

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