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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第3話 無能と言われた力が、世界の理を壊し始める

第3話「使えないなら捨てる」


目を覚ましたとき、最初に感じたのは――柔らかさだった。


(……ベッド?)


ゆっくりとまぶたを開ける。


視界に入ったのは、見慣れない天井。

高級な布地のカーテン、整えられた室内。


(ここは……)


「目が覚めたか」


低い声が、部屋の奥から響いた。


視線を向けると、窓際に立つ男――アルヴェルトがいた。


相変わらず、氷のような表情。


「……おかげさまで」


体を起こそうとして、わずかに顔をしかめる。


まだ完全ではない。

けれど、昨日よりは遥かに楽だ。


(回復が早い……やっぱり)


抑え込んでいた魔力が、自然に循環し始めている。


「水だ」


差し出されたグラスを受け取る。


「ありがとうございます」


一口飲むと、体の奥にじんわりと広がる。


(……ただの水じゃないわね)


魔力が微かに含まれている。

回復を促進するための処置。


(この人、意外とちゃんとしてる)


ちらりと彼を見る。


視線が合う。


「何だ」


「いえ。思ったより親切な方だと」


「気のせいだ」


即答だった。


(でしょうね)


少しだけ、口元が緩む。


「状況は理解しているか」


アルヴェルトが淡々と切り出す。


「ええ。拾われた身、ということですね」


「正確には“保留”だ」


冷たい言葉。


「使えるかどうかを見極める。それだけだ」


(来たわね)


「では、試験ということですか?」


「そうなる」


彼は机の上に置かれていた小さな箱を手に取った。


「これを見ろ」


差し出されたのは、金属製の装置。


一見すると、ただの壊れた道具にしか見えない。


「魔導具だ。動かなくなっている」


「……なるほど」


手に取る。


外側は破損していない。

問題は内部。


(魔力の流れが詰まってる……それも複雑に)


普通の魔導師なら、修復は困難だろう。


「直せるか」


短い問い。


(試されてるわね)


私は目を閉じる。


ゆっくりと、意識を集中させる。


――魔力の流れを“視る”。


内部構造が、頭の中に浮かび上がる。


(やっぱり……単純な故障じゃない)


意図的に歪められている。

まるで、解ける者を試すように。


(……面白い)


ほんのわずかに、口元が上がる。


指先に、魔力を集める。


「――調整します」


淡く光が灯る。


空気が、わずかに震えた。


アルヴェルトの視線が、鋭くなる。


(見てるわね)


けれど、止める理由はない。


内部の魔力回路を、一本ずつ修正していく。


絡まった糸を解くように、丁寧に。


そして――


「……これで」


光が、すっと消える。


次の瞬間。


カチリ、と小さな音がした。


魔導具が、静かに動き出す。


部屋の空気が、一瞬だけ変わった。


沈黙。


(……さて)


ゆっくりと目を開ける。


アルヴェルトが、こちらを見ていた。


その瞳に、わずかな変化。


「直しました」


淡々と告げる。


彼は無言で魔導具を手に取り、確認する。


そして――


「……ほう」


短く、息を吐いた。


それだけ。


それだけなのに。


(評価が変わったわね)


空気で分かる。


「偶然か?」


「いいえ」


即答する。


「再現可能です」


わずかに沈黙。


彼は、ゆっくりとこちらに近づいた。


距離が詰まる。


(……近い)


見下ろされる形。


その視線は、完全に“観察”だった。


「名前はリリアーナと言ったな」


「はい」


「リリアーナ」


名前を、なぞるように呼ばれる。


それだけで、妙に意識が引っかかる。


「一つだけ確認する」


低く、静かな声。


「貴様――何を隠している」


(やっぱり来た)


私は、ほんの少しだけ考える。


どこまで見せるか。


どこまで隠すか。


そして――


「少しだけ、得意なことがあるだけです」


微笑む。


あくまで、穏やかに。


アルヴェルトは、しばらく私を見ていた。


やがて、口元がわずかに動く。


「……いいだろう」


背を向ける。


「とりあえず、捨てるのは保留だ」


(合格、ね)


「ありがとうございます」


「礼はいらん」


振り返らずに言う。


「ただし――」


その声が、少しだけ低くなる。


「期待はするな」


(ふふ)


内心で、笑う。


「ええ、もちろん」


期待されるつもりなんて、最初からない。


――ただ。


(勝手に、評価が上がるだけ)


それでいい。

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