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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第25話 一人に戻る音が、こんなに重いなんて

第25話「一人になる音」


静かだった。


あれだけの喧騒が嘘のように、公爵邸は静まり返っている。


(……終わった、のね)


窓際に立ち、外を見下ろす。


門の前にいた人々は、もういない。


だが――


(……消えてはいない)


視線は残っている。


噂も、恐れも。


すべて。


(……早かった)


一日で、ここまで変わる。


(人の評価なんて、こんなものね)


「……リリアーナ様」


扉の向こうから、声。


(……誰?)


「……ルークです」


(……)


「入っていいですか?」


一瞬、迷う。


(……)


「どうぞ」


扉が開く。


ルークが入ってくる。


だが――


(……距離)


微妙に、離れている。


「……」


沈黙。


「……その」


言葉を探している。


(……無理に来たのね)


「……大丈夫、ですか?」


(……それ)


少しだけ、笑う。


「どの意味で?」


「え……」


困った顔。


(……優しい子ね)


「体調か」


「それとも」


「立場か」


沈黙。


「……全部、です」


(……正直)


「……体は問題ありません」


「立場は」


少しだけ、視線を外す。


「ご覧の通りです」


沈黙。


「……俺は」


ルークが、拳を握る。


「リリアーナ様が、そんな人だとは思いません」


(……)


「でも」


(……来る)


「みんなが、ああ言ってると」


声が、少しだけ震える。


「……分からなくなる」


(……)


(それが普通)


「……そうですね」


小さく頷く。


「それでいいと思います」


ルークの顔が、強ばる。


「……え?」


「無理に信じる必要はありません」


「自分で判断してください」


(……)


「……でも」


「今は距離を置いた方がいい」


(……)


「巻き込まれますよ」


沈黙。


(……)


ルークが、一歩下がる。


(……来た)


「……すみません」


小さく、頭を下げる。


(……謝るのね)


「……気にしないでください」


「正しい判断です」


(……)


「……失礼します」


扉が閉まる。


静寂。


(……これで)


(完全に一人)


ベッドに腰を下ろす。


(……慣れてるはずなのに)


昔から。


誰にも頼らず。


一人でやってきた。


(……でも)


胸の奥が、少しだけ重い。


(……違うわね)


(今は)


一人じゃなかったから。


「……リリアーナ」


低い声。


(……来た)


扉が開く。


アルヴェルト。


「……どうかしましたか?」


「様子を見に来た」


(……それだけ)


「問題ありません」


「そうか」


短い会話。


だが――


(……距離)


ほんの少しだけ、ある。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「今回の件ですが」


少しだけ、間を置く。


「迷惑をかけました」


沈黙。


「……気にするな」


(……)


「想定内だ」


(……)


(それ)


「……そうですか」


小さく頷く。


沈黙。


(……何か)


(違う)


「……リリアーナ」


「はい」


「外には出るな」


(……)


「当面は」


(……また)


「……分かりました」


素直に答える。


(……争う気力がない)


沈黙。


「……」


アルヴェルトが、何か言いかけて。


止まる。


(……)


「……何でしょう?」


「……いや」


(……)


沈黙。


「……」


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「少しだけ」


視線を上げる。


「一人にさせてください」


沈黙。


(……)


「……ああ」


短い返答。


(……)


扉が閉まる。


静寂。


(……本当に)


(終わったわね)


ベッドに倒れ込む。


天井を見上げる。


(……)


「……ふふ」


小さく、笑う。


(……何やってるのかしら)


全部。


うまくいっていたはずなのに。


(……でも)


(これでいい)


(依存しすぎていた)


(だから)


(少し、戻るだけ)


一人に。


目を閉じる。


(……大丈夫)


そう思いながら。


(……少しだけ)


胸が、痛かった。

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