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追放令嬢の私、規格外錬金術で国家認定“危険個体”にされたけど、公爵様が全力で囲って溺愛してきます  作者: 慈架太子


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第23話 静かな時間ほど、壊れる前触れ

第23話「静けさの裏側」


翌日。


公爵邸は、久しぶりに穏やかな朝を迎えていた。


(……静かね)


廊下を歩きながら、小さく息を吐く。


昨日までの張り詰めた空気が、少しだけ緩んでいる。


(……一応、退いたのかしら)


王宮側も、すぐには動けないはず。


あれだけの戦力差を見せつけたのだから。


「リリアーナ様」


執事が声をかける。


「朝食のご用意が整っております」


「ありがとうございます」


(……日常)


ほんの少し前まで、普通だったもの。


(戻った、ように見えるだけね)


食堂。


アルヴェルトはすでに席についていた。


「遅い」


第一声がそれ。


(通常運転ね)


「おはようございます」


「……ああ」


短い返答。


だが――


視線が、ほんの一瞬だけ長く止まる。


(……確認)


席に着く。


食事が運ばれる。


静かな時間。


(……落ち着く)


「……体調は」


アルヴェルトが言う。


「問題ありません」


「……そうか」


(同じ会話)


だが――


(少し違う)


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「昨日は」


少しだけ、間を置く。


「ありがとうございました」


沈黙。


「……当然だ」


(……でも)


「助かりました」


もう一度、言う。


その瞬間。


「……」


彼の手が、わずかに止まる。


(……効いた)


「……お前もだ」


小さく、返ってくる。


(……珍しい)


「私も?」


「……ああ」


「いなければ、厄介だった」


(……それ)


「では」


小さく笑う。


「やはり分担ですね」


「……そうだな」


(認めた)


食後。


中庭。


穏やかな日差し。


「珍しいですね」


「何がだ」


「こうして、何もない時間」


沈黙。


「……必要だ」


(……)


「ずっと戦い続けるわけではない」


(……そうね)


「……リリアーナ」


「はい」


「しばらくは動かない」


(……?)


「王宮も様子を見るはずだ」


(……そう見える)


「その間に」


一歩、近づく。


「体勢を整える」


(……準備ね)


「了解です」


(……でも)


(それだけじゃない)


その時。


「――見つけた」


声。


(……誰?)


振り返る。


そこにいたのは――


一人の少女。


金の髪。


見覚えのある顔。


(……あ)


「……エミリア」


元婚約者の、隣にいた令嬢。


「久しぶりね」


微笑む。


(……変わってない)


「……何の用ですか?」


「挨拶よ」


軽く言う。


だが――


(……違う)


目が、笑っていない。


「あなた」


一歩、近づく。


「面白いことになってるわね」


(……知ってる)


「王宮が動いてる」


(当然)


「それでも、ここにいるのね」


(ええ)


「……はい」


「強いのね」


にこりと笑う。


(……嫌な笑い方)


「でも」


声が、少しだけ低くなる。


「いつまで持つかしら?」


(……)


「……何が言いたいのですか?」


「簡単よ」


一歩、近づく。


「あなたのこと」


「もう、かなり知られてるわよ」


(……)


「出自」


「能力」


「過去」


(……どこまで)


「全部ではないけど」


「“異質”だってことは、ね」


(……早い)


「……誰が」


「さあ?」


肩をすくめる。


「でも」


「止まらないわ」


(……)


「あなたが何をしても」


「もう遅い」


沈黙。


(……)


「……それでも」


静かに言う。


「私はここにいます」


一瞬。


エミリアの目が細められる。


「……そう」


「なら」


「楽しみにしてるわ」


くるりと背を向ける。


「崩れる瞬間を」


(……)


去っていく背中。


静寂。


「……嫌な女だな」


アルヴェルトが言う。


(……珍しい)


「ええ」


小さく頷く。


「でも」


視線を落とす。


「言ってることは、間違っていません」


沈黙。


「……リリアーナ」


「はい」


「気にするな」


(……無理ね)


「……努力します」


「だから足りない」


(同じ会話)


でも――


(今回は違う)


(本当に)


少しだけ、不安が残る。


「……アルヴェルト様」


「何だ」


「もし」


少しだけ、間を置く。


「本当に、選ぶ時が来たら」


沈黙。


(……)


「どうしますか?」


一瞬。


彼の視線が、止まる。


「……決まっている」


低い声。


「全部、取る」


(……)


(やっぱり)


「……そうですか」


小さく笑う。


(でも)


(それが一番、危ない)


空は、穏やかだった。


だが――


(嵐は、もう来ている)

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