第17話 その力、国家にとって危険です
第17話「知られてはならないもの」
夜。
公爵邸は静まり返っていた。
(……眠れない)
ベッドに横になりながら、天井を見つめる。
理由は分かっている。
(王宮)
昼の使者。
“再調査”。
(……遅かれ早かれ、来ると思ってた)
指先に、微かに魔力を集める。
淡い光。
(これを見れば)
普通じゃないと分かる。
(だから、隠してきた)
ずっと。
「……起きているな」
低い声。
(……来た)
扉が開く。
アルヴェルト。
「ええ」
起き上がる。
「どうかしましたか?」
「確認だ」
短い言葉。
(……確認)
「王宮の件だ」
(やっぱり)
「どうする」
(……どうする、ね)
「……正直に話しますか?」
あえて、聞き返す。
「必要ない」
即答。
(そう来ると思った)
「だが」
一歩、近づく。
「俺には話せ」
(……)
空気が、変わる。
「……どこまで?」
静かに聞く。
「全部だ」
迷いのない答え。
(……全部)
一瞬、迷う。
(ここで隠すか)
(それとも)
(……)
「……アルヴェルト様」
「何だ」
「もし私が」
少しだけ、間を置く。
「王宮にとって危険な存在だったら?」
沈黙。
「それでも」
視線を合わせる。
「守っていただけますか?」
数秒。
長い沈黙。
「……当然だ」
低く、はっきりと。
「理由は変わらん」
(……そう)
「では」
小さく息を吐く。
「少しだけ、お話しします」
彼が、黙って頷く。
「私の錬金術は」
指先に光を灯す。
「現代のものではありません」
「……古代系か」
(気づくの早い)
「ええ」
「失われたはずの技術です」
「だから、隠してきました」
沈黙。
「……規模は」
(来るわね)
「……国を一つ、変えられる程度です」
完全な静寂。
(……引く?)
だが。
「……そうか」
それだけ。
(……それだけ?)
「問題ない」
(……え?)
「扱えるなら、問題ない」
(……この人)
「扱えなければ、俺が止める」
(……本気ね)
「……怖くないんですか?」
「何がだ」
「私が」
少しだけ、声を落とす。
「制御できなかった場合」
沈黙。
「……その時は」
一歩、近づく。
「俺が壊す」
(……)
完全に。
(覚悟決まってる)
「……そうですか」
小さく笑う。
(なら)
(大丈夫ね)
その時。
――コンコン。
扉が叩かれる。
「……誰だ」
「失礼いたします!」
執事の声。
「緊急報告です!」
空気が一変する。
「入れ」
扉が開く。
「王宮より、再度使者が到着しております!」
(……早い)
「今回は――」
一瞬、言葉をためる。
「強制命令書を携えて」
沈黙。
(……来たわね)
「内容は」
「リリアーナ様の身柄、即時引き渡し命令です」
空気が、凍る。
(……強引ね)
「理由は?」
「“国家安全保障上の重要対象”として」
(……格上げされたわね)
沈黙。
「……断る」
アルヴェルトが言う。
(即答)
「ですが、今回は正式な命令で――」
「関係ない」
低い声。
「ここは俺の領域だ」
(……完全に戦う気ね)
「……アルヴェルト様」
「何だ」
「私、連れて行かれた方が早いのでは?」
あえて言う。
「却下だ」
即答。
(迷いなし)
「面倒を避けられます」
「面倒は排除する」
(……強い)
「……本気ですか?」
「当たり前だ」
一歩、近づく。
「お前を渡す理由がない」
(……)
完全に。
(守る側にいる)
「……そうですか」
小さく頷く。
(なら)
(覚悟を決めるしかない)
「では」
「一緒に戦いましょう」
その瞬間。
彼の目が、わずかに細められる。
「……ああ」
短い返答。
だが――
その声には、確かな熱があった。




