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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第4話 おっさん陰陽師、久しぶりの肉を食べる


「何もないところでごめんね」


「……問題ないぞ。雨風をしのげそうなだけで十分だ」


『そ、そうだね!』


 レイラに案内された家の場所は街の路地裏の奥だった。一応は雨風をしのげそうな木の板を継ぎはぎした屋根が付いているが、とても狭いし襖もなく、これは家と呼べるようなものではない。両親がいない時点である程度予想していたとはいえ、その予想よりも酷かった。


 とはいえ、他に行く場所もないので、下に敷いてある木の板の上へ座る。ふ~む、まずは日銭を稼ぐことから始めなければならなそうだ。


「さて、腹ごしらえといきたいところだが、このウサギをどうしたものかな」


『ご主人は料理なんてできないもんね~』


 街へ来る途中でビャクが仕留めた角の生えたウサギ。レイラに聞いたところ、角ウサギといって食べることが可能らしいが、どうやって食べればよいのだろう?


 普段の食事は屋敷の者に任せきりだったため、我はまともに料理などしたことがない。魚であれば丸ごと焼けばいいと思うのだが、たぶんこのウサギは丸ごと焼くだけで駄目な気もする。


「ヤコウおじちゃん、よかったらレイラが解体してもいい?」


「むっ、レイラはウサギを捌けるのか?」


「うん。滅多にないけれど、ウサギさんやトリさんが獲れることもあるんだ」


『へえ~小さいのにレイラはすごいんだね』


「すまぬが任せてもよいか?」


「うん!」


 レイラは奥にあったボロボロの鍋やら皿やらを持ってくる。おそらく捨ててあったものを拾ってきたのだろう。そして携えていたこれまたボロボロのナイフを取り出す。


「あっ、そういえばお水がなかったから、井戸へ汲みにいかないと!」


「ふむ、水か。そういえば喉が渇いたな。我が用意するから、井戸へ汲みにいかずとも大丈夫だぞ」


 そういえば腹も空いたが、喉も乾いてきた。これまでいろいろとありすぎたおかげで気にしていなかったが、目を覚ましてから何も飲んでいなかったな。


「いでよ、玄武! 急急如来律令!」


「うわあ~」


 五芒星の陣を描き、北の守護神である玄武を顕現させた。


『ご主人様、ご無事だったのね!』


「心配を掛けたな、ゲン。いろいろとあったのだが、なぜか今のところは大丈夫だ」


 3尺3寸(約1メートル)ほどの甲羅を持った緑色の大きな亀。この裏路地は狭いから、ゲンの身体だとギリギリだ。


 スーやビャクの時と同じように今の状況を簡単に説明した。


『確かに京の都とは全然違うわね。そんなことが起こるなんて驚いたけれど、ご主人様が元気になって、スーちゃんも元気そうでよかったわ』


『ゲン姉も元気、元気~!』


 ゲンとスーがじゃれ合っている。式神同士で仲が良いのは実に結構。


「は、初めまして。レイラです!」


『あら、可愛いわね。よろしくね、レイラちゃん』


「レイラ、玄武のゲンは水を司る式神だ。鍋とコップをこちらへ」


「うん」


『はい、どうぞ』


「うわあ~すっごいね!」


 ゲンの目の前に水の塊が浮き、鍋とコップに水が満たされていく。ゲンの出した水はそのまま飲むことが可能だ。


『火はおいらに任せてよ』


「うん! スーちゃんもありがとう!」


 スーがゲンに対抗心を燃やしているようだ。


 レイラは角ウサギをテキパキと解体していく。そういえばビャクが角ウサギを狩った時、首元を切って血抜きをした方がいいと教えてくれたのはレイラだった。まだ子供なのにウサギを解体できるとは、これまで大変だったのであろうな。




「はい、できたよ!」


「ほう、こいつはうまそうだ」


 レイラが解体してくれた角ウサギを木の枝に刺してスーの吐く炎で焼く。バルム殿からもらった野菜の切れ端は鍋で茹でて柔らかくしておいた。


 もちろん屋敷で出てくる料理よりもみすぼらしいことは間違いないが、病に倒れてからは少量の粥しか食べられなかった我にとって、肉を食べるのは本当に久しぶりである。さて、ウサギの肉を食べたことはあるが、角の生えたウサギは初めてだ。どんな味がするのだろうか?


「おおっ、これは美味である! とてもうまいぞ!」


 野性味のある弾力と、脂の旨みが口いっぱいに広がっていく。京で食べたウサギは淡白な肉の味であったが、この角ウサギとやらの肉は重厚な味の塊である。塩もなにもかかっていないというのになんという味だ!


 それに野菜は切れ端だというのに、それぞれがしっかりと味を主張してくる。こちらの赤色の実は酸味があり、緑色の野菜はまったく青臭くなく、ほんのりと甘みが伝わってきた。我がここしばらく粥しか食べていないことを差し引いても、美味過ぎるぞ。


「スー、ゲン、こいつを食べてみてくれ」


 式神は食事などをとる必要はないが、四神などの高位の式神は人と同様にものを食べることができる。味も感じることができるので、たまに式神と一緒に食事をとっていた。


『うわっ、すっごくおいしいよ!』


『あら、本当においしいわね。普段お屋敷で食べているお肉よりもおいしいかもしれないわ』


 ふむ、やはり我と同意見のようだ。どうやら我がしばらくまともなものを食べていなかったからそう感じるわけではないらしい。


「レイラ、この角ウサギやバルム殿からもらった野菜は特別美味であったり、希少な物だったりするのか?」


「ううん、全然そんなことないよ。もっとおいしいお肉や野菜はいっぱいあるよ」


「そうなのか……」


 どうやらこの食材が特別なものというわけではないらしい。塩すらも振っていないのにこの味とは驚いた。どうやらこの地の食材は京のものよりも美味らしい。


 そのまま皆と共に角ウサギの肉と野菜を食べ尽くした。角ウサギを狩ってくれたビャクの分は取っておくつもりだったのだが、あまりにも美味過ぎたのが悪い。さすがにこの裏路地ではビャクの体躯は収まりきらないから顕現させることができなかった。また明日、別の魔物を狩ってくるとしよう。




「ふう~レイラのおかげで久しぶりに美味なる食事ができた。感謝するぞ」


「ううん! 私の方こそ、本当にありがとう! ヤコウおじちゃんのおかげで、久しぶりにとってもおいしいお肉を食べられたよ!」


 そう言いながら微笑むレイラ。童の笑顔はよいものだ。


「それではゲン、我が困った時はまた助けてくれ」


『ええ、もちろんよ。いつでも呼んでね、ご主人様』


 顕現していたゲンを還す。どちらにせよまたすぐに呼ぶことになりそうだがな。


「さて、それにしても明日からどうしたものか……。ああいった魔物とやらは金に変えることはできるのか?」


「うん。お肉も売れるし、角ウサギの毛皮や角は少しだけどお金になるよ」


「ほう」


 ふむ、そうなると日銭を稼ぐためにはこの魔物とやらを狩るのがよさそうだ。


「魔物を倒すなら()()()になれば、依頼を受けられるし、普通よりも高く買い取ってくれるよ」


「ぼうけんしゃ?」


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