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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第28話 おっさん陰陽師、呪詛を祓う


 領主殿とマーチル殿と共に屋敷の中へと入る。


 領主の護衛と思われる銀色の鎧を身に着けた兵士が我やレイラの姿を見て訝しんでいたが、マーチル殿の紹介もあってか咎められることはなかった。レイラは弟子であると紹介したが、人命が懸かっているゆえ、今回は修行をしながらというわけにはいかぬ。


「……なるほど、これが呪いか」


 とある一室に案内されると、そこにはレイラよりも少し上の12~14ほどの青年がいた。この世であるのかはわからぬが、もうすぐ元服(げんぷく)を経て成人となるくらいの年頃である。


 かの者は大きなベッドの上で苦しそうな表情を浮かべていた。領主殿がかけていた布団をめくると、彼の上半身に巻き付くように大きな黒い痣が身体を覆っている。


「最初は黒い痣が胸の中心に現れたらしいのだが、そこからその痣がだんだん広がっていき、今では身体の半分以上まで広がっている。痣が広がるにつれて身体が弱り、今では立ち上がることもできず、呼吸をするだけでも精一杯の状態だ。これは間違いなく闇魔法の呪いで聖魔法によって解呪できるはずだったのだが、この呪いはあまりにも強すぎて、無理やり解呪するとこの者の身体までもたないのだ……」


 マーチル殿から詳しい症状を聞く。


 ……ふむ、これは蟲毒(こどく)の呪詛と似たようなもののようだ。蟲毒とはヘビ、ムカデ、毒虫などを壺や箱に閉じ込め、共食いをさせて最後に生き残った1匹に全ての生物の怨念や毒を宿らせて()とし、人を呪い殺す呪術である。


 それを受けた者にはこの者のように身体中へ黒い痣が広がっていく。早ければ5夜もせずに命を落とすのだが、この者はもう10夜も耐えている。とはいえ、痣を見るにそろそろ限界が近い。


「領主殿、これならばなんとかなるやもしれぬ」


「本当ですか! お願いします、どうか息子を!」


「承知した。そのためにもご子息殿の髪を少し頂戴するぞ」


「か、髪ですか? は、はい、もちろん大丈夫です……」


 意味が分からないという表情を浮かべる領主殿だが、呪詛を返すための反噬(はんぜ)の術には対象の者の髪や爪などといった身体の一部が必要となる。


 マジックバッグから磁石という物を取り出す。京の都では星や太陽の動きから方角を確認するのだが、この世ではまだそれが確認できない。だが、この磁石という物があれば方角が簡単にわかるのだから驚いた。


 ベッドを動かし、ご子息の頭を北の方へ向け、東西南北の四方に霊符を貼る。そしてご子息の髪の毛を少し切り、麦の茎などが乾燥してできた藁を編んで作った人型の人形の中へと埋め込む。昨日は街の市場でこの磁石と藁を購入し、霊符の準備をしておいた。


「それでは反噬の術を始める」


「あ、あの……昨日の聖魔法使いの方とはずいぶんと異なるやり方なのですが、本当に大丈夫なのでしょうか?」


「う、うむ……。ヤコウ殿は少し変わった術の使い手と聞いている……」


 領主殿とマーチル殿が不安そうなのも仕方がないかもしれぬ。京の都でもそうであったが、藁人形を前にして行う反噬の術は陰陽術を知らぬ者からすれば、逆に呪詛をかけているようにも見えるからな。


『ご主人なら大丈夫だよ!』


「うん! おじちゃんはすごいんだもん!」


 我の後ろに控えさせていたスーとレイラが我を信じてくれている。弟子であるレイラの手前、我も無様な姿を見せるわけにはいかぬな。


「ふう~」


 呼吸を整え、左手の人差し指と中指を立てて刀印を結ぶ。


りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん!」


 九字の呪文と九種類の印によって厄を祓う九字護身法(くじごしんほう)により呪詛を祓う。


 ピシッ。


「に、人形が!?」


「領主殿、ご子息の痣が小さくなっています!」


 我が九字真言を繰り返し唱えていく度に少しずつ藁人形の藁が弾けていき、藁が黒く染まっていく。そしてその代わりにご子息殿の黒い痣が少しずつ小さくなっていった。


 この藁人形は形代として人の代わりとなって厄災を移す役割がある。我が普段偵察に使っている紙の形代も我の視界を移す役割があって同じようなものだ。


 形代である藁人形が少しずつ弾けて黒く染まっていくが、思っていたよりも呪詛の力は弱い。随分と呪詛が進んでいて心配していたが、これならば問題ないだろう。


「……よし、これでもう安心であろう」


「父……さん……」


「おおっ、ビルク!」


 ご子息殿が目を覚まし、領主殿がその者を抱きしめる。


「呪詛は祓ったが、しばらく寝たきりで体力は消耗しているであろう。十分に休息と食事をとらせてやるといい」


「あ、ありがとう! ヤコウさん、このご恩は決して忘れません!」


 そう言いながら領主殿は息子を抱きしめながら涙を流す。よっぽどご子息を愛しているのであろうな。


「……第三級相当の聖魔法でも解呪できなかった呪いをこうもあっさりと解呪するとは」


『さすがご主人だよ!』


「おじちゃん、すごい、すごい!」


 スーとレイラが我へ抱き着いてくる。まずは無事にご子息を救うことができてほっとした。だが、陰陽師の役はこれだけではない。


「さて、それではこの呪詛を()()()()()としよう」


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