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京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第10話 おっさん陰陽師、形代を使う


「よし、森へ到着だ。助かったぞ、ビャク」


『お安い御用です、主』


 街から森までは先日と同様にビャクの背に乗ってきた。


「ビャクちゃんはとっても速いね! 景色がビュ~ンってなったよ!」


『ふっ、レイラ殿は度胸があるな』


 レイラも二度目となるとビャクの背に乗るのは怖くなかったようだ。ビャクは結構な速度で走っていたのだが、それも気にしていないようだ。


「さて、いくつか依頼を受けたが、まずは腹ごしらえをしたいところだな。そこそこの獲物を探すとしよう。戦闘はビャクに任せるぞ」


『お任せください、主』


『ちぇっ、おいらも戦いたかったなあ……』


「スーちゃんの炎はすごくて森が火事になっちゃうからね」


 森ではこのままビャクを顕現したまま探索をする。我はその辺りのことをあまり意識していなかったのだが、レイラの言う通り、森で火の魔法などは厳禁らしい。そのためスーは今回は休みだ。


「この森はなかなか広そうだ。こいつを使うか」


「これはなあに?」


「まあ見ているといい。令!」


「うわあ~」


 我が取り出したのはいつもの長方形の霊符ではなく、小さな人の形をした10枚の紙である。我が五行力を込めると、人型の紙はフワフワと宙へ浮き、森の中へ散っていった。


 目を瞑りながら意識を集中すると、人型の紙が見ている景色を共有することができる。これは形代(かたしろ)といって、こうして操作をしながら諜報活動ができるという優れものだ。


「……むっ、あちらの方角にイノシシがいるな。普通のイノシシよりも少し黒くて大きいかもしれぬ」


「きっとワイルドボアかな。イノシシよりも獰猛だから、レイラが森で出会ったらすぐに逃げるの。でもお肉はとってもおいしいんだよ」


「ほう、ならばまずはそいつを狩るとしよう」


 冒険者になるための試験を受けて森まで移動してきたがすでに昼時だ。さすがに腹が減ってきたし、まずはなにかを食べたい。


 ちなみに朝食は街で購入したパンというものを食べたが、なかなかうまかったぞ。小麦粉を使う唐菓子のようだったが、それよりもふっくらとしていて優しい味であった。京の都で麦は高級な品なのだが、こちらの世界ではそれを使ったパンが主食らしい。米の方は見かけなかったが、他の地域にあるのか気になるところである。




「フゴッ」


 先ほど形代で見た場所へと移動する。イノシシは鼻が利くと猟師の者から聞いたことがあるので慎重に移動してきた。ビャクの大きな身体が見えぬよう、少し離れた場所から観察する。


 ワイルドボアはこげ茶色をした毛皮で、京で見たことがあるイノシシよりも一回り大きい。そして特筆すべきはその大きな牙だ。上下の牙がこすれ合うことで牙の先端は三角形に削られ、鋭利な刃物のような形となっている。あれに足をやられれば致命傷になり兼ねない。


「フゴゴ!」


 しばらく観察しているとワイルドボアもこちらに気付いたようで、こちらを睨みつけてきた。匂いはなくともビャクの白くて大きな身体は森の中ではとても目立つから仕方がないか。


「うう……」


 ワイルドボアから発せられる殺気は昨日のゴブリンの比ではない。身体が大きいというのはそれだけで十分な強さだ。レイラが怯える気持ちもわかる。


「ビャク、金剛烈爪(こんごうれっそう)


『承知しました、我が主!』


「フゴッ……」


 ワイルドボアがその巨大な牙をこちらに向けて突進してきたが、その前にビャクが右前足を振るう。するとビャクの長く鋭い爪から衝撃波が放たれ、ワイルドボアの首元を深くえぐった。


 そしてそのままワイルドボアは足元から崩れ落ち、前のめりに倒れながら動かなくなった。


「お、おじちゃん、今のはなあに……?」


「ビャクは金を司る守護神でな、牙や爪は金剛石並みの硬度がある。一度その爪を振るえばその斬撃は飛翔する刃となって敵を切り裂くのだ」


「ビャクちゃん、すっご~い!!」


『ふっ、それほどでもないですよ』


『ちぇっ、おいらも戦ったなあ……』


「先も言ったが、森の中で緊急時以外は火を使ってはならぬぞ」


 四神はそれぞれ属性を持っている。朱雀のスーは火を司るが、森の中で使うのは少し危険だ。白虎のビャクは金を司り、硬く鋭い金属を自在に操る。森の中で魔物を狩る役はビャクが適任だな。


「近くに川があるからそこへ運ぶとしよう」


 ワイルドボアをビャクの背に乗せ、川へと運ぶ。




「……レイラ、解体は問題なさそうか」


「うん! ビャクちゃんの爪はとってもよく斬れるからすっごく楽だよ!」


『ふふっ、私に任せてください』


 川で血抜きをしたあとはレイラがワイルドボアを解体してくれている。レイラが持っていたナイフはボロボロで、ワイルドボアを解体することが難しいため、ビャクが硬い爪を使いながらレイラの指示通りに解体していく。


 ちなみに幼いレイラだけに解体を任せているわけではなく、我は我で形代を使って採取依頼であるマドレッド草とローベル草を探している。形代はこういったことに使えて便利だ。他にも討伐対象であるゴブリンなどを発見したら形代にこっそり跡をつけさせている。腹ごしらえを終えたら回収と討伐をおこなうとしよう。


「ふう~。おじちゃん、ちょっとだけだけれど、食べる分のお肉は取れたよ」


「うむ、助かった。早速飯にするとしよう」


『焼くのはおいらに任せて!』


 スーもこれまで出番がなかったからだいぶ張り切っているようだな。朝以降何も食べていないから我もだいぶ腹が減った。このワイルドボアとやらはどんな味がするのか楽しみである。


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