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夜だけの生活
奇妙な共同生活は、いつの間にか日常になっていた。
朝、目を覚ますと部屋は静かで、夜の気配だけが消えている。
「行ってきます」
返事はない。
それでも言わずにはいられなかった。
昼間の街は忙しい。
仕事をして、謝って、また仕事をする。
けれど、日が傾く頃になると、胸が少し軽くなる。
帰れば、彼女がいる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
それだけで、一日が区切られた。
彼女は眠らない。
僕が眠り、朝になれば、彼女はいない。
生きている時間と、止まっている時間が、きれいにすれ違っている。
それでも僕は、このズレを問題だと思わないようにしていた。
夜だけの生活で、十分だったからだ。
十分だと、思い込もうとしていた。




