ミッドシップ 侵攻2
僕は、ミッドシップ神国中枢に向かってただ1人で侵攻を続けた。
決められた場所で極大魔法を使う。
結果のことは考えない。
誰かが死ぬとか、意識しない。
これは、命令だから、魔法を使っているだけだ。
僕の責任じゃない。
命令書に書いてあるとおり。
僕は正しい事をしている。
僕は思考を放棄することで、責任も放棄できる、と自分に言い聞かせた。
僕は現実を逃避するために、ひたすら剣を振った。
朝起きて振る。休憩中に振る。寝る前に振る。
近衛騎士団から僕に剣技を教えに来てくれていた、筋肉ダルマ先生の指導を思い出しながら、ひたすら振り続けた。
そういえば、剣の形が決まらない時は、ポーズをとるんだっけ?
このポーズと剣の素振りだけが、僕が現実から逃避できる時間になり、没頭していった。
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ミッドシップ神国の王都に近づいたところで、岩壁に文字が彫られているのを見つけた。
”この先の洞窟に生存者あり→”
急いで削ったのか、足元には削った後の、石片がおちている。
ここに到着する前の地点で、発動させた魔法でこのあたりも、巻き込んだはずだが、、、
洞窟の方を見ると、3弾の岩の段差を下ったところに、横穴の洞窟がある。
もしかして、横穴の前の段差が、暴風を防いだのか?
だから、洞窟の中で生き残れた?
僕は人に会いたいという欲求を抑えることができなかった。
荷車をデポして、段差を降りて行った。
洞窟の入口に到着した。
「誰か居ますかー!」
洞窟の奥の方に松明の明かりが見える。
明かりは少しづつ近づいてきて、女性の声が響いた。
「あなた、人間?一人?」
「僕一人です。人間ですよ。助けに来ました。」
松明を前にかざして近づいてくるので、顔はよく見えないが、3人ほどいるようだ。
「うちら、助かるんね。」
「安心してください。何も恐れることはありませんよ。」
松明はどんどん近づいてくる。
「ほんま、怖かってん。おっきい炎が、どんどん近づいてきて、ミッドシップ全体が燃えて、無うなってしまうか思て、、、ほんまに、あんた一人でやらはったん?」
喋っている言葉がなまっていて、理解が難しくなってきた。
「怯えさせていたんのは、ごめんね。僕一人で、やってきました。」
「ほんま、恐ろしい人や。」
顔全体は見えないが、口角があがったのが見えた。
洞窟の入口に近づいてきたときに、相手の顔がようやく見えた。
その顔は、ヴァンパイアだ!
いきなり、洞窟の前で対峙する形になった。
それよりも、ヴァンパイアが言葉を話すなんて。
そんなことより、3人の薙刀を持ったヴァンパイアに囲まれた。
ピンチだ。
僕は剣を構えながら移動していくが、3人は、僕の移動に追従するように、移動しながら包囲している。
隙がない。
「あんたは、この国を焼き尽くしてる!なんで、こんなひどいことするん!」
「僕だって、好きでやってるわけじゃない!」
なんとか、荷車までもどらなくては。
段差3段登っていかなくては。
でも、僕は剣を持っていても素振りしかしたことがない。。。
「ドスねぇさん、こんなやつ、聞くだけ無駄や!」
3人は少し間合いをとった。
「ドスエ!イヤドスエ!一気に決めるで!」
3人が一直線に並んだ。
偏西!風力撃!!!!
つむじ風をまとって、ドスが先頭になって突っ込んでくる。
ドスの水平に振る薙刀を飛び越えてかわすと、
ドスの背後から、ドスエが全力で垂直で斬りつけてくる。
剣で払いながら、こちらから一気に突っ込んだ!
すると、イヤドスエが強烈に突いてきた。
僕は、突きを交わして、イヤドスエの肩を踏み台にして一気にジャンプした。
僕の身体は、宙を舞い、荷車のところまで舞い上がった。
「我が主神、サドミスト!孤独に耐えきれずに、人との関わりを求め、罠にかかるような、愚かな下僕に、慈悲を与え給え!フェニックス!」
フェニックスたちが乱舞し、敵を、横穴を、岩を粉砕していく。
また、僕は荒野に唯一人となった。
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ヴァンパイアって思考もできず、意思疎通もできず、ただ凶暴に人を襲うだけの存在ではなかったのか?
彼女たちは、言葉を話していた。
国土を護りたいという意志もあった。
もしかして、人の心がある?
急に今までの自分の行為が恐ろしくなってきた。




