虜にしてくる怪異2
あれは冬だった。
私は猫目当てに、祖父母の家に泊まることがある。祖父母宅にある私の蒲団は電気毛布入りで、こたつのように温かった。そこで私は猫ホイホイと化し、体はバキバキになる代償を支払って安眠を得るのだった。
当時、私は自室で寝ると悪夢を見がちで、猫と寝ると悪夢を見ないジンクスにすがっていたという経緯もある。
悪夢は金縛りを伴うことが多く、体が動かず蒲団のなかにいる状態で、貞子のような女性に思いきり足首を掴まれ、部屋の出口へ引っ張られていく夢や、隣で何かが走り回っているのが恐いのに確認もできず、逃げることもできない夢などが多かった。特に前者の夢は落ちたり転んだりする夢と同じで、引っ張られる感覚で目が覚めてしまうほど強烈で、より性質が悪かった。
その夜、私は猫たちを抱え、猫に敷かれ、安心して眠っていた。
ところが、隣で何かが走り回っている状態で金縛りになる悪夢を見てしまった。しかも隣で走り回っていた成人男性の両足が、自分の上に駆け上がり、胸の上に乗っているという嫌な終わり方をした。
この見えない何かが走り回っていて、それが成人男性の両足だったという悪夢は、当時見た怪談『新耳袋』の「オルゴール」という回に強く影響を受けた結果だと思っている。
じわりと嫌な汗をかきながら目を覚ますと、なぜか体を動かすことができなかった。そして痛みを感じた。まだ夢を見ているのか、現実でも金縛りにあっているのか、とパニックを起こしたが、左腕だけは動かせることに気づき、恐る々る蒲団をめくった。何かが胸に乗っている感覚があり、それが夢で見た足だったらどうしよう、悪夢の続きだったらどうしよう、と怯えながら覗きこむと……
猫が眠そうにこちらを見てきた。しかも体の大きな男の子が2匹も胸に乗っていた。総重量は10kgほど。悪夢も見るわけである。そして純粋に体が、胸やわき腹や腰がものすごく痛い。
猫はのんびりと、目を細め、手で顔を隠して「まぶしい~」という。
私はそっと蒲団をかけ直した。人間電気毛布の役目を全うした私がようやく起き上がると、お昼前になっていた。
これらの体験を通して思ったことがある。
猫とは、もしかすると怪異の仲間であるのかもしれない、と。




