誰でしょう
残業していたら突然、停電にみまわれた。幸いデータは保存した後だったので、諦めて帰宅することにした。
スマホの灯りを頼りに廊下を歩いていく。とりあえず守衛さんの部屋に行かないと。その道行きで誰かとぶつかった。
「あいてっ すみません」
守衛さんだと思ってライトを向けたが、誰もいない。というか、ライトで照らしながら歩いていたんだから、誰かが正面からくれば気づくはずだ。
その時は、よくわからない不思議なことが起きたくらいに思っていた。
ようやく守衛室に着いて、守衛さんがドアを開けてくれると、ぱっと電気が戻った。
「何だったんですかね。それじゃ見回りに行ってきます」
「いや、あの、自分戸締まりしてきたんで大丈夫ですよ」
とっさに、守衛さんを行かせてはいけないと思った。何故かはわからない。戸締まりをしたのは本当だし、そのまま何とか守衛さんを言いくるめて二人で会社を出た。
何となくふり返ると、さっき誰かとぶつかった廊下にチカチカと光が見えた気がした。じっと見てはいけない、と何故か思った。
守衛さんにも気づかせないように、やたらいろんな話題を振りながら駅まで行った。
上りと下りに別れて帰る時、何となく恐くなってきて、人がまばらに乗っている車両を選んで乗りこんだ。
あれ以来おかしなことはひとつも起きていないので、それが悪いことかそうではなかったのかはわからないが、詳しいことは知らずにいたいと思っている。




