猟奇殺人事件
個人所有の島に招かれたゲストたちが、次々に猟奇殺人鬼によって殺害される事件が発生した。殺人鬼は異様なのどの渇きを癒やすために人を襲い、その生き血をすする吸血鬼なのだと噂された。
そこに居合わせた15歳の少年は、生き残るためにこの殺人事件の調査に乗り出した。
調査中、少年は吸血鬼と称される犯人に追われることとなった。そこで宿泊先の館に逃げ帰ったが、誤って家主の居住区に入りこんでしまう。厳格な男の肖像の前で右往左往していると、フレンドリーな青年に話しかけられた。彼は島主の次男だと言う。
事件の説明がてら、次男に館を案内してもらい、末の小さな弟に会ったり、ペットの大型犬と戯れたりして、少年はすっかり恐怖をぬぐうことができた。
次男は母に事の次第を話し、大人達を招集するまで少年を部屋に匿うと申し出た。少年は犯人がまだ外で待ち伏せているかもしれないと考え、次男の提案をありがたく受け入れた。
しばらく部屋で待っていたが、次男がなかなか戻ってこない。それどころか大人を集めているはずの館に物音一つしないのを不審に思い、少年は部屋を出ようとした。しかし施錠されている。少年の安全を思えばこそ仕方ないことだが、次男を呼んでも誰も来なかったので、少年は部屋じゅうをさぐった。
そして、隠し通路を見つけた。少年は怪しみ、通路を通ってみた。その先の部屋で、大量の植物に寄生されたような姿で眠る男を見つけた。男の顔は、あの厳格な肖像の男そのものであった。
少年は何か恐ろしくなり、通路を引き返そうとしたが、次男の部屋から斧を振るうような音が聞こえた。そこで植物の部屋に戻り、内鍵を回して外に出た。
廊下には末っ子が待っていた。少年は硬直したが、末っ子の手引きで館の裏手に出してもらった。
末っ子は小さな声で言った。
「島で人を殺してまわっているのは次兄です。兄は病気なんです。でも、人の血を飲むばかりで普通の食事をしないので、もうすぐ死ぬとお医者さまに言われています。この島にあなたがたを招いたのは母の仕業ですが、そのこともすでに本国の警察に知れているから、じきに逮捕されるでしょう。そして兄は死に、すべてが終わるでしょう。もし長兄が生きていれば何か違ったかもしれません。あの部屋をご覧になったでしょう。長兄は眠っているようですが、次兄がおかしくなり始めた頃に最初の犠牲者になったのです。次兄は犬が恐ろしい悪魔に見えるようで、常に犬と一緒にいる僕のことは襲いませんが、分別がついているわけではないのです。きっと時間の問題でしょう。さあ、話が長くなりました。あなたは宿泊区に戻り、皆とひとつの部屋にこもってすべての鍵をしめてください。迎えの船が来たら、僕は次兄を何とか館に閉じこめておきましょう。さあ、行ってください。でも、どうかこのことは誰にも言わないで。次兄の犯した罪は重いものですが、もうすぐ天罰が下るのです。次兄はその行いによって自らを殺すのです。どうか、誰にも言わないでください。それでは」
少年はほうほうの体で宿泊区に戻り、末っ子の言うことを守って皆とたえしのび、無事に迎えの船で本国に戻った。
数年が経ち、かつての少年のもとへ手紙が送られてきた。差出人は末の弟とだけ書いてあったが、すぐに誰からかがわかった。
手紙には短く、すべてを公にしてほしい、本にでも書いてほしいとあった。すべての精算をする時がきたのだと。
男は嫌な予感がしたが、末の弟に問う術もない。言われたとおり、先の話を怪奇小説のアンソロジーに寄せた。幾多の短編とともに一冊にまとめられ本が出版されて数日。男は遠い国で起きた事件を耳にする。
怪奇小説の吸血鬼の弟だと称する青年が出頭したが、彼は警官の目の前で自らの頭を撃ち抜き死んだ。大事に抱えていた鞄には、クッキーの缶におさめられた犬の骨だけが入っていたという。




