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謎の伴奏者
Tさんは教育実習生だった頃、ピアノの苦手課題を練習するため夜の学校に残ったことがある。
別に霊感はないし、特に恐いと思うこともなく、Tさんは音楽室でピアノの蓋を開けた。
ただちょっと違和感があった。電気をつけているにしては、部屋が少し薄暗く感じた。
でも学校は夜に使うことを想定していないからこのくらいなんだろうと、気にせず鍵盤に触れた。
最初はぽーんと一音おすだけ。どのくらいの音が出るか確かめるためだった。
すると、Tさんがおさえた白鍵から右にずっと離れた場所で、弦が「ほわわわん」と不協和音を奏でた。
Tさんは首を傾げたが、まあ古いピアノだから調律が狂っているのだろうと納得しようとした。
でも、偶然鳴ったにしては不可思議だった。ずいぶん場所も離れているのに共振するだろうか?
Tさんは少し嫌な予感がしながら、もう一度、違うキーをおしてみた。
するとやはり、離れた場所の弦が震え、「ほわわわん」と不協和音が鳴った。
Tさんはピアノの蓋をそっと閉めると、一目散に音楽室から逃げだした。
それ以来、特に変わったことはなかったが、夜の学校でピアノの練習をするのはやめようと思ったそうだ。




