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【第四話 誤解、解決です。】

「は?」

エーセアが驚いた。そりゃあそりゃあ、そうだろう。だって、悪いと思って疑っていた人の誤解を解こうとする人が現れて、その人と友達になりたいと言っているんだから。

でも、おかしく思われようが構わない。

ーーだって、今世では悪役令嬢を幸せにするんだから!(ついでに私もなって友だちになるんだから!)

 というか、彼女はそもそも注意をしただけであって、そもそも悪くないのだ。だから、必ずしもこの誤解を解いてみせます!

すぅ、と息を吸ってなるべく冷静さを保ったように取り繕い私は言った。

「ヴェラージェ様は悪くありません。このことを証言させてはいただけないでしょうか?エーセア様、アイレシカ様。」

見たところアイレシカはヒロインなので平民の出とか言ったところだろう。エーセアは、どこかで名前を聞いたような気がするので、きっと貴族の高貴な出の方だろう。

「ふっ、いいだろう。僕はアイレシカのことを信じるよ。」

「エ、エーセアくん…」

感動したようにアイレシカはエーセアの名前を呼ぶ。その瞬間、私は思った。これは、やばい、と。

ーーきっと、悪役令嬢は婚約者に対する無礼(君付けで呼んだこと)を注意するに違いない。でも、それを今したらまたあらぬ誤解が生まれてしまう。

私はヴェラージェ様が口を開く前に悪役令嬢らしく注意する。

「あら、アイレシカ様。エーセア様は高貴なお方ですので、くん、ではなく様をつけるべきだはなくって?」

「えっ、あっ、はい!そうでしたね。すみません、つい。エーセア様、すみません!私、知らなくて。クラーツェさん…あっ、クラーツェ様も、ありがとうございます。」

ーーあれ、感謝されてしまった?予定外だな。

思わぬ事態に驚きつつ、まずは誤解を解くことを優先する。

「それで、ヴェラージェ様は悪くないのですが、それを言ったところで、きっと信じてもらえないしょうね。なので、証言をさせていただきますね。」

「分かった。」

どうやらエーセアは事件にはしっかりと向き合うタイプの人間なようだ。

その時だった。ヴェラージェが私のところへ来てこそっと耳打ちをした。

ーー耳元で囁くとか、一生聴いていたい…って、そこじゃなくて。

「ねぇ、あなた。そんなこと、する必要はなくってよ。こんな状態には私、慣れていますし。一人でもなんとかなります。」

すぐに離れていってしまった。でも、ふとヴェラージェの方を見ると唇をぎゅっと噛み締めて今にも泣きそうな気持ちを必死に堪えていた。つい、安心させたくなってしまい、ヴェラージェの元に行き、こっそっと囁く。

「私の意思でやっていますの。大丈夫ですわ、それに、貴方は悪くないのでしょう?どうか、堂々となさってくださいまし。」

ーー大丈夫。絶対助ける。

心に誓った私は思いっきり叫ぶ。ありったけの声を振り絞って。令嬢あるまじき行動だとしても。

「先ほどこちらにいらっしゃった皆様!ヴェラージェ様は悪くありません。そうですわよね?」

と。すると、きっと正義を重んじる人たちだろう。証言をしてれた。

「たしかに、そこにいた令嬢はその前にいた令嬢が止まっていたから、注意をしただけに思えた。」

「私も、一部始終見ていたわけではありませんが、悪くはないと思います。」

ヴェラージェが震えている。でも、その顔には何処か安堵したような、喜んだような、複雑な表情が浮かべられていて。

ーーかっ、か、かか、か、可愛い〜〜!!!最高です!供給されました。キャパオーバーです..

「あなた、私の誤解を解いてくださるのではなくって?」

そうだった。最後の一押しってところかな。よぉし、がんばるぞ〜

「これで、納得いただけましたでしょうか。エーセア様。」

「あぁ、でも、彼女の足の痛みは一体?」

「足、ですか?そうですね、あまり推奨はされないことですが、見せていただいでもよろしくて?」

「はっ、はい!お願いします。」

パッと見たところ、靴擦れが原因なのではないかと思う。

「そう、ですわね。これは、ヴェラージェ様に蹴られた、踏まれた、などではなく、靴擦れなのでは?ねぇ、アイレシカ様、貴方、今日もしかして新しい靴を履いたばかりなのでは?」

先程の態度からするに、きっとアイレシカは平民ヒロインだろう。それなら、靴擦れが原因でもわからなくはない。いつもと素材が違うものを履いたからだろう。

「はい!そうなんですっ!ヴェラージェ様…」

「とのことですが、これでご理解いただけましたか?」

「っ、あぁ、そうだな……すまない、ヴェラージェ。」

ーー良かった。認めてくれた。これで悪役令嬢を幸せにすることに一歩前進したのかな?

「えぇ。認めてくれればいいんですの。」

ーーやっぱり、悪役令嬢は堂々としている所が良いんだよねぇ。


__数分後…

余韻に使っていた私はかなりぽけーっとしていたみたいだ。周りの人が全員いなくなっていた。

ーーおかしい。どうして?

「ねぇ、君。何してるの。」

「ひぇっ!」

「入学式、始まるけど。」

「え゙っ。本当ですか?」

そうだ。私は時間に余裕を持って来たはず。そんなわけ。

「わ、私を騙そうとしても、簡単には騙されませんわよっ!」

「はぁ…ん、これ。急ぎな、じゃあ…」

ーーこれは…?時計?

時刻は8:50になっていた。入学式は8:50からだ。

ーーでも、こんなこなれた嘘には騙されませんよ。かなり凛々しいのでは、私。


『これより、入学式を開催いたします。ご来場の方々は速やかに席におつきください。新入生が入場します。』


…すみませんでした。嘘じゃありませんでした。

ーーでも、どうしよう。間に合わないな。



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