【第二話 悪役令嬢になるために(実行編)】
「も〜っ、なんで…こんなの思ってた悪役令嬢と違う!!!これじゃあただの令嬢になっちゃう…」
私ことクラーツェ・シセトリトは現在豪邸の頂上でまさしく悪役のように叫んでいる。正確には、嘆いている。
__時は数日前に遡る。
「私がなりたいものは、ただ一つ!それは、悪役令嬢!!!」
これを目標に悪役令嬢になるためには何をしたらいいのかをまず私はノートに書いた。
【悪役令嬢になる方法】
①メイクで顔をキツめのキリッとした感じにする。
②話し方をお嬢様にする。
③話すときに少しきつい事を言う。(相手のためにも)
④扇を持ち歩く。
⑤服装を変える。
などなど…こう改めてみると、悪役令嬢好きとは?ってなってしまいそうだ..
でも、皆も考えてみてほしい。悪役令嬢者が好きでも、いざなるためには?と言われると難しくないか?
とういうか、私の想像力が乏しいのと偏見が凄いのが問題かもしれないが。
とにかくやってみたのだ。思いつくことは実行に移さないと。これが今世の掟でもある。
〜実行①メイクで顔をキツめのキリッとした感じにする。〜
これは、率直に言うと失敗に終わった。いや、でも進歩したとも捉えられる。
メイクをしようとして私は気づいたのだ。
「私、前世では引きこもりオタク陰キャだったから、メイクをしたことがない!?」
ということに。
ーーいや、でもさぁ、案外才能とか発揮しちゃうかもしれないし、やってみないとだよね!
・・・・・
やった結果がこれである。みなさんもご察しの通り、私には才能なんてなかった…
メイドたちにも
「クラーツェ様、でいらっしゃいますよね…?メイクでしたら、私達に言っていただけたらお手伝いしますのに..」
かなり引かれてしまった。
その結果としてメイドのリンによる徹底的なメイク指導が始まったので、ある意味進歩と捉えることもできるだろう。
結果:失敗(進歩有り)
〜②話し方をお嬢様にする〜
これは、成功というか、失敗というか、といったところである。
いや、それというのも、この世界では、お嬢様言葉は当たり前だったらしく、お嬢様風に話してもなんか、普段通りというか、逆にお嬢様風じゃないと変というか、みたいな感じだった。
というか、なんだか言葉もおぼつかなかったため、礼儀作法の指導を入れてもらうことにした。
これは、成功というのかな?
結果:成功(微妙)
〜③話すときにキツめの言葉をいう(相手のためにも)〜
ーーこれが一番意味のわからないこと、なんだよな。
なんというか、おかしなことになってしまった。キツイことをいったはずなのに逆に感激されてしまったというか、なんというか…
例えば、
「ちょっとそこのメイド…セノと言ったかしら?そこが綺麗になっていなくてよ。」
「っ、クラーツェ様…」
「ぇ、えぇっと、な、泣かないで?」
ーーどうしよう、泣かせてしまった..名前をわざと間違えて言ったこと?それとも、注意をしたこと?
「クラーツェ様!嬉しすぎて、泣いてしまっただけです。ちなみに、私はセアです、名前を覚えようとして下さったこと感謝感激です。掃除も、私がしっかりと行えるよう、できていないところを注意してくださったのですね!?嬉しいです。」
ーー…一体どうして?悪口のつもりで言ったはずなのに…
とか。
あとは、
「ちょっと、レイ、配膳が遅くってよ。」
と注意したのだが、
「クラーツェ様。私、最近調子に乗っていたため、完全無欠だと思っていたのですが、自分の欠点に気づくことができました。今後改善しようと思います。ありがとうございます。」
ーー注意したはずなんだけど。というか、最近調子に乗ってた自覚あったんだ…
などなど。悪役風に言ったつもりだったのだがどうもおかしい。
というか、家のメイド達素直で可愛すぎない?やっぱ天国でした…
そして、なんか、忠誠心高くない?いや、嬉しいけど…ねぇ?
なんというか、クラーツェは元からこの家の中では人気だったようだ。
ーーでも雰囲気は出たし、いいよね?
結果:成功(誤解あり)
〜④扇を持ち歩く、⑤服装を変える〜
こちらは同時進行なので一緒に報告しようと思う。
ちょっと色合いとか雰囲気を変えるだけなら私にも可能だった。
なんだか、これは成功した。
結果:成功(確実)
豪邸の最上階で、私はノートに結果を記入していく。
ーーちょっとでも近づけたかな?…いや、どうだろう?
なろうと思って気づいたことなのだが、意外とはじめが難しい。
ーーやっぱり、悪役令嬢って凄い。それと、これからがんばらないと。
新たな覚悟を決めた私は、学園に入学する時までに完璧に悪役令嬢になってやる、と思った。
かくして、時は過ぎ999日後、今日は入学日となった。
ーーついに今日こそ、悪役令嬢に会える!!
舞台の幕は開いたのだった。
次回投稿10/26 16:00
体の調子が悪いため一日送らせていただきました。すみません。