善悪
「次、ウィルベルト・ロバーツ!」
俺は無言で歩き出す。
槍を構えた天使の2人が大きな扉を開く。
扉の先は広々とした空間が広がっており、法廷のような作りになっている。
中央の台に乗ると、俺の神判が始まった。
「この男ウィルベルト・ロバーツは、両親が経営している病院に就職、親の病院を相続した後、病院は経営困難により破産。残った財産で寄付等を積極的に行っておりますが、最後は暴漢に刺され死亡しております」
「ほう……」
俺の人生を簡潔にまとめ読み上げたのは、検察官のような天使だ。
それを聞いて相槌を打ったのが俺の正面にいる天使、神判長だ。
この天使にこれから神判を言い渡されるであろう俺は、無言で成り行きを見守っている。
「では聞こう、何故病院は経営困難に陥ったのかね?」
「はい、ウィルベルトは医師としての腕はあまり良くなかったようです。殺人病院と言われ患者は軒並み離れて行きました」
「つまり救える筈だった多くの命は失われたという事だな?」
「そっ、そんな……!」
身を乗り出しそうになった俺は、隣に居た天使に槍を突き出され口を噤む。
あまりにも暴論だ。
「寄付と言っていたな、どのような事ををしたのだ」
「はい、この男は財産のほぼ全てを寄付しました。自身の罪を精算したかったようですね。ですがこの男は人を見る目も無かったようです、ボランティア団体を装ったテロリストに寄付していたのですから」
「う……うあああ……」
あんまりだ。
俺のやってきたことは無駄だったのか?
無駄どころでは無い、これでは害悪だ。
俺は感情を言葉にすることも出来ず、呻き声を上げて膝から崩れ落ちた。
そんな俺を見た神判長は愉快そうに言う。
「この者はテロリストに寄付をしたのか! 病院では人を救うことも叶わず、間接的にも人に害を成すとは悪逆無道も甚だしいな」
「えぇ、国家転覆罪と言っても過言ではありませんね」
「ふむ」
地面にへたり込んだ俺は顔を上げることも出来ないまま、目を閉じて神判の時を待つ。
「国家転覆罪と言ったな、この男は何処の国の医師だったのだ」
「(自主規制)です」
「判決! 天国行き!」
「え?」
『善悪』
最後のオチを書く瞬間に気付いたんだよ
あ、これ書けないヤツじゃん!って
だけど、20分も掛けて書いたのに消すのも勿体無い気がしたから、一応保存しちゃえって
浅慮なのよ、ホント
余談ですが、友達に
「罪と悪の違いって何?」
と聞いたところ
「戦争は罪だけど悪ではない」
と言われました
もし本当に人生の審判があるのだとしたら、それは罪を基準としているのか
それとも悪を基準としているのか
ちなみに私は「離婚は罪ではないが悪である」と偏った意見を述べておきます