第4話
エドは自分の部屋に戻って、棚からいつも使っているリュックサックを引っ張りだした。その中に服を詰めていった。
「えーっと、中央都市まで2日、向こうで2日、市まで2日だから、洗濯すれば3日分で済むかな。」
その様子を見に来た父が、
「その鞄もずいぶん長いこと使ってるな。新しい学校に行くようになることだし、向こうで新しい鞄を買ってあげるから、必要最低限だけ入れておきなさい。」
と言ってくれた。この鞄は3、4年前から使っている。もうずいぶん古くなり、肩紐はほつれかかっている。エドはその鞄に、3日分の服を詰めた。
「あとは…洗面用具に…馬車旅で寝る用の寝具…あとは…そうだ、旅用の靴を履かないと。」
エドは1階に降りて、玄関のタンスから丈夫にできた旅用の靴を取り出した。半年前に市に行った時に母が買ってくれたものだ。
「よし、履けるな」
旅用にできた頑丈な靴なので、靴の心配はなさそうだ。
「よし…あとは…」
「ふふふ、嬉しそうね。」
荷物の準備をしようと家の中を歩き回っているエドを、父と母は微笑みながら見ていた。
「ああ、そうだろうな。なんせ初めての遠出だからな。」
ーーーーーー
3日後。
「よしエド、荷物は全部持ったか?」
「うん!」
「忘れ物はない?」
「もちろん!」
「それじゃあ、出発だ!」
こうして、3人は家を出た。エドの家から西の方にある市まではだいたい歩いて30分ほど。距離にして2kmくらい。たまに行商馬車が通るので乗せてもらうこともできるが、だいたいは徒歩である。
中央都市で買わなければいけないものの確認や、服のサイズなどを確認していると、あっという間に市に着いていた。
「よし、そしたら乗り合い馬車の駅を探さんとな。市の北にあるようだ。東門から入ってきたから、右手側だな。」
市の北の方を目指して歩いていると、
「ハルミア・ブック-クライン・ブック系列店-」
と書かれた店があった。
「ここで教科書は買えるみたいだね。」
「そうね。でも長旅で破れたらいけないから、帰って来てからにしましょうね。」
そんな会話をしながら「ハルミア・ブック」を通り過ぎて、20mほど歩いたところに
「乗合馬車 中央都市行」
と書かれた看板とベンチがあった。奥には2台の馬車が止まっている。
「中央都市まで、3人でお願いします」
と、父は馬車の先頭にいた御者に話しかけた。
「はいよ。大人2人と子供1人だから、合わせて10000ルーツだ。」
父は財布から1000ルーツ銀貨を10枚取り出した。それを御者に手渡すと、御者は10枚あることを確認してこう言った。
「まいど。お前さんたちが1番最初だ。馬車は20分後に出るから、1つ目の馬車に荷物を置いてきな。出るまで中にいてもいいが、盗まれたりはしないから、軽く食いもんでも調達するといい。」
と2台あるうちの1つ目の馬車を指差した。エドたちは荷物入れに自分たちの荷物をしまい、貴重品だけ持って今日の夜ご飯を調達することにした。