溶鉱炉の光〜量子力学の夜明け〜
「鉄は国家なり」からはじまったのかもしれません。
溶鉱炉と光と量子力学の夜明け(と温度計)のお話です。
溶鉱炉は純鉄を生み出した
鉄を熱して不純物を取り除き
冷やして結晶化する
溶鉱炉は温度管理を要した
良質な純鉄を生産するために
適切な製造条件を保つため
溶鉱炉は光を放った
オレンジから赤にいたる灼熱の
温度で変わる光
溶鉱炉は光を放った
赤外線から紫外線に渡る広範な
スペクトルからなる光
溶鉱炉は量子を創った
スペクトル形状は光のエネルギーが
連続値でないことを示した
溶鉱炉は量子を創った
周波数に比例するエネルギーの最小単位
これを光量子または光子と呼んだ
溶鉱炉は光量子を創った
光全体のエネルギーは光量子の数だけを
足し合せた不連続値となった
溶鉱炉は量子力学を創った
光が波動であるとともに粒子となった
これが量子力学の夜明け
溶鉱炉は温度計を創った
光量子理論を熱平衡理論に当てはめて
スペクトル計から温度を逆算
溶鉱炉は温度計を創った
新たなスペクトル計を使った温度計は
溶鉱炉の温度を測った
溶鉱炉は太陽の温度を測った
新たなスペクトル計を使った温度計を
太陽に向けて6,000Kを得た
溶鉱炉は星の温度も決定した
新たなスペクトル計を使った温度計は
恒星の表面の温度も決める
溶鉱炉は宇宙の温度を測った
マイクロ波まで測定するスペクトル計を
星のない方角に向け2.7Kを得た
溶鉱炉が放つ光は、黒体放射と呼ばれます。
黒体放射は、光を放つことのできる物質からは、必ず、放たれるものです。物質内の光の熱平衡による放射で、物質の種類には依存しない放射です。理論上は、温度のみに依存します。
本作でスペクトルと述べましたが、ピークは1本のブロードなスペクトルです。従来の電磁気学(電気と磁気を統一した理論)から、光は電磁波の一種で波長が可視の範囲のものであることが分かっていました。電磁気学によると、光(電磁波)のエネルギーは、連続値(どんな数値でもなれる)となるはずでした。電磁気学と熱統計力学から黒体放射のスペクトルを計算すると、スペクトルの裾が全く一致しません。ドイツの物理学者マックス・プランクという人が、スペクトルと一致する経験式を発見しました。その数式をさらに検討すると、光が粒子であり、各粒子が光の周波数できまるエネルギーをもつ、つまり、光全体のエネルギーは不連続になる、と考えて、熱統計力学に当てはめると、黒体放射のスペクトルをピタリと再現しました。
スペクトルから逆算して温度を測ることもできるようになりました。
この時点では、光量子は、まだ黒体放射を説明する仮説です。のちに、光を金属に照射すると、金属から電子が放出される、光電効果が発見されました。放出される電子の数は、照射した光全体のエネルギーで決まると思われていましたが、光量子のエネルギーで決まることが実験で証明されました。異なる事象を説明したことから、光量子の妥当性は認められました。ちなみに、光電効果を光量子で説明できる可能性に気付いたのは、アインシュタインです。
昨今、体温計としても使われているサーモグラフィも、人間からの黒体放射を用いているものですが、この理論が必要なほど広いスペクトルは測っていません。人間からの黒体放射は、人間は、溶鉱炉よりも低温なので、可視光ではなく、赤外線です。
後書きが長くなりましたが、溶鉱炉の本職は、製鉄です。製鉄にもきっと面白い物語があると思います。