ヴォルパーティンガー その36 リルがこんなに賢いわけがないのです!(失礼)
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素人のつたない作品ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
……驚いたのです。
まさかリルの口から、そんな言葉が出てくるとは。
リルの生い立ちからして、狼には嫌悪感を抱いていてもおかしくないのですけど、今の口調はどちらかというと白オオカミちゃんを心配というか、労わるかのようだったのです。
『……なぜ、リルはそう思うのですか?』
『だって、あのオオカミさんは、悪いオオカミさんじゃないと思うのよ?
ミラお姉ちゃんとリルを攻撃してこないなら、仲間に入れてあげてもいいと思うの。』
『それは……前にも話した通り、わたしが傷付け、その後傷を治した時に言い聞かせたから、こちらに攻撃してこないのです。
今はよくても、いつかは攻撃してくるかもしれないのですよ。
それに、リルの家族を殺して食べたのは狼なのです。狼が憎くはないのですか?』
『う〜んと、前にミラお姉ちゃんが話してくれたけど、お姉ちゃんのお兄さんが人間に捕まって食べられたのを、お姉ちゃんは怒ってないって言ってたの。
それは、人間たちも生きるために食べただけだからって。』
そう言われれば、そんなことを話したような……。
わたし自身が忘れていたことを、よく覚えていたのですね。
『それはリルがオークや猪を殺して食べるのとおんなじ。
リルの家族が狼に食べられたのも、狼が生きるためだから、やっぱりおんなじことなの。
それをミラお姉ちゃんが怒ってないなら、リルも怒らないのよ?』
思わずポカンと口をあけて、リルを見つめてしまうのです。
えっ? なにこの子。
いつの間にこんなに賢くなったのですか⁈
ちょっと前までは平仮名でしゃべるかのような、幼い口ぶりだったのに、難しいことをちゃんと理解しているのですよ!
まさか、進化することによって知能も高くなったのですか?
唖然とするわたしを置きざりに、リルは続けるのです。
『それに、あのオオカミさんはきっとひとりぼっちだと思うの。
リルもそうだったから分かるのよ?
ひとりぼっちは不安で寂しいの。
今はもう、ミラお姉ちゃんが家族になってくれたから寂しくないのよ?
でも、オオカミさんはひとりぼっちなの。
……オオカミさんは寂しいから、仲間になりたいんじゃないのかなぁ?』
誰なのですか、お前は⁈
リルがこんなに賢いわけがないのです!
……とまあ、失礼な冗談はさておき。
リルの心の成長に感動する、わたしなのですよ。
他人ならぬ、他狼の心情まで慮れるとは。
それと、白オオカミちゃんがはぐれなのは、わたしも薄々気がついてはいたのです。
狼は基本的に群れで行動する生き物なのですからね。
それを、白オオカミちゃんは最初から一匹で居て、仲間がいる気配もないのです。
……おそらくは、アルビノであることと、称号の「知恵ある魔獣」のせいで、孤立してしまったのですかね?




