ヴォルパーティンガー その32 踏んできた場数が違うのですよ!
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つたない作品ですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。
わたしの言葉を聞いて、ピタッと動きを止めたリルなのです。
『…………………………ミラお姉ちゃんに攻撃を当てたら、リルの言うことを聞いてくれるの?』
『そのとおりなのです。』
『………………なんでも?』
『ええ、なんでも構わないのですよ?』
『……一日中なの?』
『え、ええ。一日中なのです。』
段々と声が低くなってくるリルなのです。
……ちょっとだけ怖いと思ったのは内緒なのですよ。
『やるの!
リルはミラお姉ちゃんと戦う練習するのよ!
それでそれで、ミラお姉ちゃんに攻撃を当てて、一日中、毛繕いしてもらうの! あとあと、添い寝も!』
う、うんうん、再び目ぇキッラキラなリルの勢いにひき気味なのですが、本気で戦う気になったのなら、それで良し、なのです。
それにリルの言う「なんでも」の内容も微笑ましいというか、気が抜けるというか。
……一日中の毛繕いは、若干、拷問めいた苦行の予感もするのですが。
まあ、リルの攻撃を受けなければいいだけなのです。
フフン。格の違いを見せてやるのですよ!
『ミラお姉ちゃん! 早く早く! 巣穴に戻って、戦う練習するのよ!』
鼻息も荒く走り出しては、振り返ってわたしに声をかけるリルなのです。
ハイハイ、そう急がなくても仮拠点は逃げないのですよ〜。
隠密をおろそかにしたらダメなのです〜。
……聞いちゃいねぇのですね。
無駄とは思いながらも、注意してあとを追うのです。
仮拠点に戻り、オークの焼き肉で腹ごしらえして、ついでにアイテムボックスの検証もしたのです。
中の時間が停止しているかは、まだ分からないのですが、かなり遅延していることは確認できたのですよ。
まる二日たった今でも、ちょっと鮮度が落ちた生肉? くらいで済んでいるのですから。
これで、当分は食事に困らないのですね。
さて、食事も済んで模擬戦をしたのですが。
結果は、わたしの圧勝なのです!
まあ、当然なのです。
踏んできた場数が違うのですよ!
リルはステータスは上がったのですが、もともと戦うのが苦手だったのです。
つまりは戦闘勘というか、体の使い方が分かっていないのですね。
逃げるのは得意なのですけど。
しかも、戦闘経験が少ないまま、進化して能力値だけ上がってしまったので、自分の能力に振り回されているのです。
さらにさらに、その上、身体強化まで見境なく使っているのですよ。
まるで、自転車にやっと乗り始めた子供が、いきなり排気量がめっちゃ大きいモンスターバイクに乗せられたようなものなのです。
突進して止まれずに大木に突っ込む。
ジャンプしたら、わたしを飛び越す。
角振って、そのまますっ転ぶ。
などなど、わたしに当てる以前の問題なのですよ。
これは先が思いやられるのです。
まあ、この状態でいきなり実戦に放り込まずに済んで良かったともいえるので、結果的には悪くないのですかね?




