ヴォルパーティンガー その31 それを聞いたリルの動きが止まったのです。
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つたない作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
それにしても、魔物がいないのですね。
さっきから、鳥とか猪とか猿とかはちらほらいるのですが、肝心の経験値の足しになりそうなのが見当たらないのですよ。
これは、オークの集団にみんな食われたのですかね?
普通のオークはともかく、キングやジェネラルには並みの魔物では対抗できないですし。
そろそろ昼も過ぎたのです。
一旦、仮拠点に戻って、今日のところはまた焼き肉でも食べるのですか。
弱い魔物が出たらリルに戦わせようと思っていたのですけど、当てが外れたのです。
ヴォーパルホーンの試し切りはしたのですが、やはり実戦で使って見なければ分からないことは多いのですよ。
まして、リルは好戦的な性格ではないですし。
進化して肉食女子になったことは分かっているのですが、戦いに対する考え方は変わっているのですかね?
そのあたりも、実際に戦わせて確かめたかったのですが、相手が必要なことなので仕方がないのです。
うーん、能力の検証だけなら、わたしと模擬戦をするだけでもいいかもしれないですね。
リルに戦い慣れさせる意味もあるし、わたしも実戦じゃなくとも、戦闘中に魔法を使う練習にもなるのです。
ぶっつけ本番はなるべく避ける方がいいと思うのですよ。
そうと決まれば。
『リル。今日のところは適当な獲物がいないので、仮の拠点に戻るのです。
戻ったら腹ごしらえをして、わたしと模擬戦、戦いの練習をするのですよ。
先に聞いておくのです。
練習とはいえ、リルはわたしと戦えるのですか?』
『ミラお姉ちゃんと戦うの?』
『もちろん、わたしは、本気で殺そうとしたり、ケガをさせようとしたりはしないのです。
あくまでも練習なのですから。
ただ、リルは本気でわたしにかかってくるのですよ。
殺すとまでは言わずとも、ケガをさせるつもりで攻撃するのです。』
それを聞いたリルは、涙目にはならないまでも難色を示すのです。
『練習するのは分かったの。
だけど、ミラお姉ちゃんにケガなんてさせられないのよ?』
『フン! わたしはAランク魔獣のヴォルパーティンガーなのですよ?
いくら進化して強くなったとはいえ、Cランクのヴォーパルバニーであるリルに、傷などつけられないのですよ!』
それでも、まだ不満顔なリルなのです。
これは別方向から攻めるのですかね。
『なんならハンデをあげてもいいのですよ?
わたしは身体強化を使わないのですが、リルは使っても良いのです。
今のわたしとリルの能力値はそのくらい差があるのですから。
その上で、そうですね…。
リルが一撃でもわたしに入れられたら、1日、リルの言うことをなんでも聞いてあげるのです。』
それを聞いたリルの動きが止まったのです。




