修行 その十六 神子? 許せとは言わぬ。
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
風邪は治った、と思うのですが喋ろうとすると咽せて咳が出ます。薬を飲んでも、のど飴舐めても止まりません。接客業なので喋らざるを得ないのに……。
どげんしたらよかとですか?(´・ω・`)
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
「早く、チビ助連れて逃げろ!」
たしか、ダンカンであったか?
孤児の少年のうち、体の大きい方が言う。
言いながらも、ナイフを抜きゴブリンの気を引くように振り回しては、別の方向に誘導しようとしているようだな。
まともに戦えば勝ち目は薄かろうに、見上げた心がけ。先程自分で言っていたように隙を見て逃げるつもりであろうが……歳の割に未だか細い手足からいって持久力に期待はできまい。おそらく逃げ切るのは難しかろうな。
そして、もう一人がわたくしの、この子の体を担ぎ上げようとしてくるが……正直に言って、触れられたくない。
いや、この孤児の少年たちの勇敢な行動自体には文句のつけようはないのだ。お母様でもある愛護神の教えにも則っているし、称賛に値しよう。
だが、元『一人の大人の女性』として……その、あまり清潔とはいえない男の子の手で触られたくないのだ!
この少年たちの昼間の行動を見ても分かるだろう!
やれ、毛虫を捕まえては女子を追いかけ回し、それに飽きれば土いじりをしたり、その手を服で拭いたり。不潔すぎて我慢ならん!
さっきも何やら素手で土を掘り返していたではないか! 手を洗ってから出直して来い!
「こっちに来たら、やーなのー!」
「お、おい! ダンカンが引き付けてくれてるうちに逃げんぞ!」
その気概だけは受け取るがな……だが断る!
神の子である、このわたくしがゴブリン如きに逃亡するなどあり得ぬ! 言語道断! もっての外!
圧倒的な火力によって滅ぼしてくれようぞ!
「どっかいっちゃえー!!!」
「ヤベェ! 伏せろ、ダンカン!」
拒絶するように突き出した両手の平に魔力を集中。ただ闇の魔力を固めただけのダークボールだが。
少年の声にもう一人が素早く対応して、とっさに地面に倒れ伏した。良い反応だ。
それを見てから、思考加速で構築した闇魔法を解き放つ。初歩の初歩の魔法。ただし、神の子に相応しく魔力はたっぷりとこめたがな。
子供が全力で投げたボール程度の速さで飛ぶ闇の玉。だが、こめられている魔力はこの森を半壊させ得る量だ。過剰な威力ではあるが、恐怖で我を忘れたから加減ができなかった……という筋書きだ。
さあ、どうする?
このままではわたくしは兎も角、この少年たちは巻き込まれて死ぬであろうし、森や周辺の被害は大きかろうて。
それを座視はできぬであろう?
「ランちゃんはメルルちゃんを守って! リルは魔法をなんとかするから!」
「かしこまりました、リルお姉様!」
やはり来たか、お母様の眷属たち。
三本角のリルお姉様と、真神のランお姉様。両者ともに完全武装だな。これでひとまずは何とかなるだろう。
……二人を騙しているのも、さらにはわたくしの存在が露見するのを防ぐために、傷付けることも本意ではない。
だが、何よりも大切なこの子の心と魂を護るためなのだ。
許せとは言わぬ。
いずれ時が来たら、その報いは受けようぞ。




