番外編 その42 ミラさんの育児日記10
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
七月七日、今日は七夕でござりまする。
妹から届いた写メに甥っ子の短冊が写ってまして、そこには……
・戦争のない世界がくるように
と、
・月山に行けますように
とありました。まだ神社仏閣巡りにはまっている小4男子。趣味が渋すぎない?しかも月山神社は山頂にあるとか。……今年の自分の願い事は「登山に巻き込まれないように」で決まりですね。(^^;
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
と、いうわけで。
第一回、メルルーナ教育会議は続くのです。
神の子とはいえ、まだ二歳の幼児。まずはのびのびと元気に育てるということで方針は一致。
もちろん、躾や善悪正邪の判断基準は教えていかなければならないのですけどね。
しかしながら、それもまた難しいところなんですよねー。なんといっても、神と人の価値基準はそれぞれ違うのですから。
例えば、人が人を傷つけたり殺したりするのは大抵の文明では悪とされるわけですが、神々の視点からすると少し違うのです。
もちろん罪は罪として認識しているのですけれども、そこまで感情移入はしないというか。特別に目をかけた人、巫女とか英雄でもなければ個体の識別とかあんまりしないっぽいし。
言ってみれば、人間から見た昆虫や小動物同士の争いみたいなものですかね。
アリとアリが戦争したとしても、おっ、やってんなーと思うだけ。
まあ、わたしは元日本人的な価値観が残っているからか、ちょっと神々の視点から外れている気がするのですが。
ちょくちょく化身を降臨させて、友達であるフィリーやリルカちゃんと交流しているわたしの方が本来なら例外なんですよね。
こんなに人に関わるのも、わたしの前世が人間だからなのかな? 初生の記憶と融合したはずなんですけど、それでも前世の人格が強い気がするのですよ。日本人の魂って強い。これが大和魂というものですか(違う)。
『そうですね……。神として立つならば、あまり人間にこだわり過ぎるのも良くはないでしょう。人の生は非常に儚いもの。別れのたびに一喜一憂していては心がもたないでしょう』
『地母神様のおっしゃる通りだと思います。ですが、人との関わりから学ぶこともまた多いかと。特に子供のうちに社会性を身につける事は重要なのではないでしょうか』
『ラン様、それならば我ら玉兎がいますよ?それにリル様、ラン様方はじめ、おひいさまの眷属もいます。わざわざ儚い人間たちと関わらなくとも社会性は身につけられるのでは?』
『リリアナさん、待って欲しいのです。たしかに今、メルルのまわりにたくさんの眷属たちがいるのですが……それは皆、家族のようなもの。本当の社会性というものは、家族の外に出て育まれるものだと思うのですよ』
ここは譲れないのです。
いやだって、みんなメルルには甘々ですからね!
もちろん愛されているという自覚も、甘えられる存在も子供には必要なのですよ?
でも、それだけだと地上の常識を知らない箱入り娘になってしまうのです。
一生、メルルを外に出さずに月神宮の中だけで暮らさせるというなら、それでも構わないですけどね。でも、それではメルルの選択肢を狭めることになるのです。
『僕としては、メルルが一生ここで暮らしてくれても全く構わないんだけれど……』
ギロリ。と睨みつけると口籠るルーナ様。
ハイハイ、親バカは黙ってようね?
この世界で戦争が起きたとして、それぞれの神の反応はというと。
太陽神『我らの加護のもと精一杯生きよ』
地母神『あまり大地を荒らさないでね?まあ、人も獣も死ねば皆大地の養分になるだけですけど』
月神『大量の死者が出ると忙しいから、やめてくんないかな?』
戦神『よっしゃ!俺が見届けてやるから、存分に戦え!』
智神『ふうむ、戦は時に技術革新をもたらすもの。とはいえ、ほどほどにな』
龍神『戦いは自らを磨き上げる。人の中から進化するものが現れるか否か……あまり期待はしないがな』
鍛治神『新しい武器や防具はないか?』
技芸神『ホホホ。古来より戦には戦士を鼓舞する歌や舞はつきもの。……ですが、今の戦場にはそのような雅な趣味はない様子。残念でなりませぬ』
愛護神『生存権をかけた戦いはしょうがないのです。わたしだって生きるために戦ってきたのですから。ですが、やるなら戦闘員だけでやれ!非戦闘員、とりわけ女子供を巻き込むんじゃないのです!』
日本人的な思考だと戦争反対!とかなりそうですけど、太陽神からすると『よくぞ戦争ができるほどに文明を発展させたな。あの小さな哺乳類がよくここまで……(感無量)』となるわけですね。




