番外編 その14 ワース王国王太后
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。m(_ _)m
昨日は、家族旅行で行ったお寺で甥っ子とそのパパさんと一緒に、なぜか287段の石段(しかも一段一段の落差が大きい。てっぺんまでの高低差は104mだそうです)を登り、そして下りました。ほかのメンバーは車ですいすいと本堂近くまで行ってるのに。
おかげで、産まれたての子鹿のように膝がプルプルしております。登りよりも下りの方が太ももに来ますな。
せめて帰りは車に乗ろう?と甥っ子に聞いたら、「おいちゃんのダイエットのためだから!(笑)」って。
うっさいわ!(^◇^;)
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
気配を感じて目を開けると、いつもと変わらない懐かしいお顔がベッドの横にございました。
「……お久しゅうございます、ミラ様。
3年ぶりほどでしょうか?」
ここしばらくはずっと寝たきりでしたから、掠れた声しか出せませんが、ミラ様はニッコリと微笑まれるとお応えになりました。
『しばらくぶりですね、フィリー。正確には2年と7ヶ月ぶりですが。』
「……近頃は神殿にも行けずに失礼をいたしました。」
『歳をとり、体が動かなくなったのだから仕方ないですよ。
わたしの方こそ、もっと早くに会いに来るべきでした。申し訳ないのです。』
「……いいえ、お忙しい御身ですから。こうして最期の時にお顔が見れただけで嬉しゅうございます。」
わたくしは、最後の力を振り絞ってミラ様に微笑んでみせますが、ミラ様の表情は曇りがちです。
「……そう悲しまないでくださいませ。
ミラ様のおかげで幸せな人生を過ごさせていただいたのですから。
わたくしを大切な友人とおっしゃって下さったこと。陰に日向にこの国を支えて下さったこと。
いくら感謝してもしきれないほどでございます。
本当にありがたく……改めて感謝申し上げますわ。」
思い起こせば、あれから沢山のことがありました。
ミラ様にワース王国の第二王子である、ハロルド様との婚約を認めていただいたこと。
その後、無事に婚礼したこと。
婚礼祝いに降臨され、わたくし達夫婦に祝福と加護を授けてくださったこと。さらには、豊穣を司る地母神様のお守りと断罪の魔道具まで頂いたこと。
おかげで二男一女の子宝にも恵まれ、今では十数人のひ孫がいるほどです。
断罪の魔道具である、『選択の断頭台』は一見すると凄惨な処刑道具に見えますが、その本質は冤罪や反省している軽犯罪者は処刑しないという、罪業の判定にあります。
この魔道具……いえ、神の手によるものですから神器ですね。この神器のおかげで、この国の冤罪は激減したと言われています。
……副産物として第一王子が、後ろ楯である大貴族ともども失脚し、ハロルド様が王に、わたくしも王妃となったのですけれどね。
急に王太子となったハロルド様とわたくしに敵は多かったですが、わたくしの実家である大公国が後ろ盾になりましたし、クリスお姉様や聖女リルカとの関係から神殿勢力の支援もあり、表立って反抗する勢力はありませんでした。
何よりも。
わたくしが神であるミラ様の友人であると、ミラ様自身が正式に宣言して下さったことが大きく影響し、王位を譲り受けてからも大過なく国を治めることができました。
……誰だって、神様の友人に対して非礼な真似など、そうそうできませんからね。
すでに王位は息子に譲り、夫も十年前に亡くしております。わたくしも齢八十を数え、ひ孫たちの成長を見守りながら離宮でのんびりと暮らしていましたが、数年前から体も衰え病気がちに。今はただ穏やかに死を待つばかりでございます。
ミラ様の目尻に涙が浮かびます。……嗚呼、こんなお婆ちゃんになっても、ミラ様はまだ、わたくしを友人として惜しんでくださるのですね。
『……わたしの権能でフィリーの寿命を伸ばせたらいいのに……。』
「……わたくしは、もう充分ミラ様に良くしていただきましたわ……。これ以上は申し訳ないほどに。」
……声だけでなく、目もぼやけ、耳も聞こえなくなってきました……。いよいよ、最期の時ですか……。
「……さようなら、ミラ様……。……またいつか生まれ変わる日まで……しばしのお別れでございます……。」
目を閉じ、無二の親友にお別れを告げますと、意識がゆっくりと沈んでいくようで…………夢現の中、ミラ様のお声が聞こえた気がしました……。
『さようなら、フィリー。わたしの友よ。
次に会う時までのお別れなのです。
………………まあ、意外とすぐに会えると思うのですけれど。』
『さっきぶりですね、フィリー。』
朗らかに笑うミラ様に、わたくしはため息しか出ません。
「ミラ様…………。」
『フフフフ!ドッキリ大成功!やったね!』
「ドッキリじゃありませんよ!
なんでわたくしは生きてるんですか!?」
『えっ?フィリーはちゃんと一回、寿命で死んだのですよ?
今は、わたしの眷属として生まれ変わっただけで。
いやぁ〜、人間の魂を眷属にするのは初めてだったから少し心配でしたけど、無事成功して良かった良かった!』
眷属⁈
わたくしはミラ様の眷属になったのですか!?
自分の体を確認すると……何やら神々しい、白い簡素な服を着ておりますが、裾から見える手も足も若々しく張りのある肌に。それこそミラ様と出会った、まだ十代の頃のようです。
顔を触っても、もはや何十年も慣れ親しんだシワもなく、ツルツルのモチモチ。
『フィリー。あなたは、わたしの助けがあったとはいえ、人の世界の発展や公平な国作りに大きな貢献をしたのです。それに、わたしの信仰も大いに広めてくれたし。
その功績をもって、わたしの眷属にしたのですが……これからもずっとわたしと一緒に居て欲しいのです!』
話について行けず呆然とミラ様を見ていると、勘違いしたのか悲しそうにおっしゃいました。
『……ダメですか?もし、本当に嫌なら今からでも輪廻の流れに戻すことはできるのですけれど……。』
ミラ様の不安そうなお顔を見て、ハッと正気に戻りました!
「滅相もござません!驚いてしまっただけですわ!
大好きなミラ様とこれからも同じ時を過ごせるなど、望外の喜び。
不束者ではございますが、幾久しくお仕え致します!』
『ありがとう!フィリー!
やっぱり、わたしの親友ですね!これからもよろしくお願いするのです!』
わたくしに抱きついて、体全体で喜びを表現されるミラ様。これほど想ってくださるのですから、お応えしない訳にはいかないですよね!
『さあこちらへ!みんなに紹介するのですよ!
もっとも、フィリーも知っている連中がほとんどですけどね?』
わたくしの手をとり、向かう先にはリル様やラン様たちミラ様の眷属が並んで、ニコニコと笑って迎えてくださいました。
相変わらず可愛らしいリル様に、怜悧な美貌のラン様。
つんと顎を上げて先輩風を吹かしているレイ様に、楚々とした穏やかな微笑をたたえるオデット様。
虹色の髪も鮮やかな双子のユルン様とグルン様。
わたくしは眷属として初心者ですからね。
先輩方!これから、よろしくお願い致します!
ミラ『わたしたちはズッ友なのです!』(*^▽^*)
フィリー「もちろんですわ、ミラ様!」(๑˃̵ᴗ˂̵)
(ツッコミ不在)
『神人フィルリネア 愛護神の友として生き、さる国の王妃として長らく国と民に尽くしたのち、昇天して眷属となった。純粋な人族から眷属となった初めての例であり、愛護神との友情からか友愛を司る。また、王族から神々の眷属を輩出した王国は、その後長く栄えたという。』
予告通り、これにていったん打ち止めとさせていただきます。また何か思いつけば投稿するかもしれませんが、予定は未定ということで。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました!(๑>◡<๑)




