アルミラージ その40 たった一つの逆転できる方法
状況を切り開く方法。
それは、今この場で進化することなのです。
進化することで体の組成が変化すれば、負傷も治るかもしれないし、魔力も回復するかもしれない。
ただし、進化する際に眠らなければ。
眠ってしまえば、そのまま殺されて、ジ・エンドなのです。
アルミラージに進化する時は眠ってしまったし、リルも名付けて眠ってから進化したのです。
眠らずに済む可能性は極めて低いのです。
根性とか精神論で耐えられるものかも分からないのです。
ですが、耐えられなければ殺されて、それで終了。
つまりは耐えるしかないのですよ!
わたしはステータスの進化可能部分を意識して、進化先を選択するのです。
進化先は『ジャッカロープ』。
キングが再び大剣を振りかぶるのです。
もはや一刻の猶予も無いのです!
進化!
わたしの体を金色の光が覆うのです。
と、同時に強烈な眠気がわたしに襲いかかる。
これに屈する訳にはいかないのです!
わたしとリルの命がかかっているのですから!
強制的に身体が作り変えられる。
眠いのに身体中が痛痒い不思議な感覚なのですよ。
まぶたが落ちかけてくるのです……。
……くっする……わけには………。
朦朧とした意識の最後の一雫が落ちようとした時。
『手助けしてあげようか?』
頭の中に中性的な綺麗な声が聞こえてきたのです。
何者なのです⁈
いやそんなことはどうでもいいのです!
わたしの魂でも身体でもなんでもやるから、力をよこすのですよ!
『プッ、フフフッ、話が早いね。
それじゃあ、君自身をもらおうか。
ああ、今すぐでなくてもいい。いずれ、君の全てを差し出してもらうよ?
それで良ければ進化を助けよう。それでいいかい?』
わかったからさっさとするのです!
こっちは時間がないのですよ!
『ああ、そこは気にしなくてもいいよ。
今は君の精神に直接話しかけているから、外の時間はほとんど進んでいない。』
な、なんですと⁈
それを先に言うのですよ。まったく焦って損したのです。
『いやいや、そんなこと言われてもね。話を聞かなかったのは君じゃないか』
た、たしかに、一気に捲し立てたのはわたしなのです。
そこはごめんなさいなのです。
でもでも、この緊急事態に急に話しかけられたのだから、あんな反応になっても仕方がないのですよ!
ハァ〜何がなんだか分からないのですが助けてくれるのなら、感謝するのです。
ありがとうなのです。
進化して身体が回復してくれれば、リルと共に生き延びる可能性が高くなるのですから。
『うん、感謝を受けるよ。
進化は即座に終わるし、傷も魔力も回復するだろう。
ついでに僕の加護もオマケしちゃうよ♪
大したものじゃないけど、まあ頑張って生き延びてね。』
加護ってなに⁈
というかあなたはいったい何者なのですか⁈
『ああ、言ってなかったっけ。
僕は月神。生と死、復活を司る、月の神さ。
よろしくね、ミラちゃん。』
ふぁ⁈
神⁈
今、月の神様って言ったのですか⁈
その神様が何故、たかが角の生えたうさぎの手助けをするのですか?
『フフフ。もともと、うさぎは僕の眷属なのさ。
まあ地上に住むうさぎ達はそこまでの関係ではないけど。
でも君だけは別。
生まれてから僅かな期間で進化して、オークキングと互角に戦えるなんてね。
そんな角うさぎは今までに見たことが無いよ。
だから興味が湧いたのさ。
これでご満足いただけたかな?』
…………はぁ……まぁ満足というか、納得はしたのです。




