神兎 その137 階梯を登り詰めし角うさぎ
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。m(_ _)m
今日、ミラさんが神へと至ります。……長かったなぁ。
ミラさんの神格については様々なご意見があると思います。が、今はこれが精一杯。
個人的には獣神要素を入れたかったですが、書いていて自然な流れ(作者の中で)に乗ったらこうなりました。
ようやく終わりが見えてきたかな?
あと少しですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。
……靄がかかったような、あやふやな意識の中に、いくつもの声が聞こえてきたのです。
『ミラお姉ちゃん! 今行くから待ってて!』
神獣変化も解け、元の姿のまま涙をポロポロとこぼしながら飛ぶリル。……フフッ、また泣き虫に戻ってしまったですね。
『ミラお姉様! すぐに参ります!』
『ミラ様! わたしは最後まで諦めません!』
白から青空の色にグラデーションしていく髪を振り乱して宙を駆けるラン。
その横を飛ぶのは、背中から純白の翼が生えた白髪の美少女。……オデットさん、神獣変化することができたのですか?
『ママ姉ちゃん! レイはもう家族を失くしたくないのデス!』
……そうですね。レイは生まれて間も無い頃に親を亡くしていたのですよね。レイも泣かないで。わたしはまだ生きているのですから。
『ミラ! また……また、わたしの目の前であの女に殺されてしまうのですか!? そんなことは絶対に許しません!』
……ボロボロの満身創痍でも地面を這って、こちらに進んでくるディアお母様。その目には涙が光っているのです。
嗚呼、また泣かせてしまったのですね。ごめんなさい、お母様。
水龍王様、火龍王様、マナお姉様もそれぞれ見るに堪えない、傷だらけの姿ですけど、諦めずに動いているのです。
わたしの大切な、とても大切な家族たち。
『ミラ様……。どうかご無事で。』
この声は……フィリー?
神殿の広間で、お姉さんで巫女のクリスさんや侍女のキャシーさん、大公さんに残念公子などなど、みんなで跪き、祈りを捧げているのです。
『ミラお姉ちゃん! 頑張って!』
天晴れママの娘……リルカちゃんだっけ?
『負けるな、ミラさん! 俺たちがついてるぜ!』
ガルドの分際でなかなかに偉そうなことを言うじゃないですか。まあ応援は受けとっておくのですけどね。
その他にも、たくさんの人々の声が、想いがわたしに伝わってくるのです。
なによりも、すぐそばにいるルーナ様からも聞こえるのですよ。
『ミラちゃん……僕の一番大切な人。
たとえ、どんな犠牲を払ったとしても、今度こそ守ってみせるからね? だから安心して。
な〜に、ミラちゃんならきっと、すぐに神にだってなれるさ!』
わたしにとっても、あなた様が一番大切ですよ?
時々、ほんとにしょーもないことをしでかす人ですけれども。
だから、あなた様がわたしを守るように、わたしもあなた様を守りたい……。
心の中にかかっていた霧が、サアっと晴れていくのです。
そう……わたしはわたし。
転生者で、角うさぎで、進化を重ねて亜神まで至り、さらに神を目指す者。
生きるため、大切な者たちを守るために頂きへと歩む者。
わたしの名前はミラ。ミルラーナ。
わたしが望むのは、憎き敵を滅ぼすための力ではない。
大切な者たちを守るための力。
愛する者たちを守り、なおかつ自分も生き抜き、添い遂げるための力なのです。
神々よ。地上に生きるものたちよ。
願わくばわたしの声を聞き、想いを知って欲しい。
わたしは、すべての生まれ来る幼い命を祝福しよう。
地母神の加護のもと、地に生まれし者たちはみな自ら生きる権利を持つがゆえ。
しかしながら、未だ成熟しきらない命は常に危険にさらされており、庇護者の助け無くば幼気な生を散らしてしまうことだろう。
だから、わたしが幼い命たちの庇護者となろう。
わたしは、すべての死にゆく者たちを哀れもう。
月神の加護のもと、この大地に生き、死せる魂はみな生まれ変わる権利を持つがゆえ。
しかしながら、生あるものの魂は安きに流れやすく、罪に溺れてしまう者もいるだろう。
だから、わたしがその罪を断ち切り、浄化して新たな生を与えよう。
……そう、わたしは…………わたしは!
わたしは、すべての愛し、愛される者たちに加護を与えよう!
すべての生きる者はみな、愛し、愛される権利を持つがゆえに!
しかしながら、愛する者を得るということは、それを失う悲しみをも得るということ。
だからこそ、わたしがその絆を守り、愛を誓う者たちの守護者となるのです!
わたしは、角持つうさぎから神へと至りし者。
幼き命の庇護者にして、断罪者。
月神の伴侶にして、愛を守護する者。
わたしの名はミラ。
愛護神ミルラーナ!
ついに、ミラさんの神格が確定しました。
愛護神ミラ。
この場合の愛は、恋愛だけでなく、家族愛や友愛、親愛、慈愛や自愛(ナルシストではなく、自分を大切にすること)など広い意味での愛です。つまりは、エルウィナスの失った神格を得たとも言えるわけで。これも一種のざまあ、かな?




