神兎 その136 (わたしはだれ?)
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。m(_ _)m
今回、ついにミラさんが神へと至るかな?と思ったら、長くなりすぎたので分割しました。
だから今日の話は、いわば前振りですね。
続きは次回のお楽しみで。
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
走馬灯のように、フラッシュバックする情景。
あの時……。
わたしとあのお方との晴れの席において、わたしはエルウィナスに、愛と美の神に呪われた。
その場で動けたのは、伴侶となるべくそばにいた月神ルーナラーナ様と、母である地龍王サーガランディアお母様だけ。
神格を歪め、神としての魂すら削って放たれた呪詛は極めて強力であり、半神のわたしはもとより、神であるルーナ様ですら致命傷になり得るものだった。
だからわたしは、とっさにかばってきたルーナ様とお母様を押しのけたのです。
『なぜ⁈』と驚愕に染まる二人の表情。
……悲しませてしまったのは本意ではなく申し訳ないですが、大切な二人をわたしのせいで失うなんて、自分が許せなかったから。
それならば、わたしが自分で呪いを受けた方がよほどましというものなのです。
その結果、三千年も待たせてしまうとは思わなかったのですけれどね……。
…………ハッ!?
今、わたしはなにを考えていたのですか?
今のは……かつてのわたしの記憶なのですか?
初めてルーナ様に会った時のような、胸の奥が切なく暖かい気持ちなのです。
添い遂げるはずだった、わたしの半身。
……今のわたしの体も半分……いや、三分の一くらい無くなっているのですけれどもね。ハッハッハッ。
兎も角!
それが今、再びあの時のようにわたしをかばい、守ろうとしてくれているのです。
嬉しい気持ちと、わたしのことは放って置いてさっさと逃げるなり反撃するなりしろ! と焦る気持ちが混ざって混乱してくるのですが、それらを貫いてなお激しく湧き上がるのは、大切な者たちを守りたいという強い想い。
……頭が痛い。
再びフラッシュバックする記憶。
これは……角うさぎ?
死んでゆく兄弟たち。生きるために殺し、食らってきたわたし。それを後悔はしていないですけど。
次は……日本?
どこかの校舎で楽しそうに笑う生徒たち。このうちの誰かがわたしなのですか? それとも、見ているわたしがわたしなのですか?
次々に続く異なる情景。
戦国時代さながらの合戦場を駆けるわたし。
高い塔の中で数多の書物に囲まれているわたし。
街角で野菜を売るわたし。
宇宙船で遥かな虚空を旅するわたし。
一匹の魚となり海中を悠々と泳ぐわたし。
鎖につながれ処刑場に登るわたし。
母と父に抱かれ産ぶ声をあげるわたし。
数限りなく繰り返していく生と死。
自分が、意識の境界があいまいになっていくのです…………。
(わたしはだれ?)
(わたしがまもりたいのはだれ?)
(なぜまもりたいの?)
『間話その10 月神』の後書きで、この先ミラの記憶が戻ることはない、と言ったな?あれは嘘だ。( ̄∀ ̄)
……嘘をついてしまい、大変申し訳ございませんでした。m(_ _)m
でも、物語的に盛り上がるかなと思います。反省はしています。けど、後悔はしていない。たぶん。




