間話 その57 玉兎と玉兎と玉兎と???
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。m(_ _)m
今日は、六十万文字突破記念で追加投稿しています。
こちらから見た方は目次をご確認くださいませ。
これからも楽しんでいただけると幸いです。
辺境の村を襲った魔物たちは、突然現れた光り輝く角うさぎによって駆逐された。……半透明の体に翼と鹿のような角の生えたうさぎを、普通の角うさぎと呼んで良いのなら、だが。
しかし、魔物たちの襲撃はまだ終わってはいなかったのだ。
最初に森からやってきたのは狼やゴブリン、オークやビッグボーアなどの森林の浅い層の魔物たち。
集団になれば恐ろしいが、訓練された人間ならば充分に対抗できるレベルではある。
だが、それらを追い立てるように、中層から深層の強力な魔物たち、トロール、オーガ、ブラッディベアなどの、人間が一対一では到底敵わない強力な魔物が次々に森から出てきたのだ。
少女は、再び鏡に願う。
「お願い、ミラお姉ちゃん!リルカたちを助けて!」
鏡から現れた角うさぎは……さっきよりも体が薄くなっているようだ。
『もちろん助けるのですが……わたしに込められた神気は残りわずかなのです。おそらくはすべての魔物たちを倒すことはできないのですよ。
なるべく時間を稼ぐので、近くの街まで逃げるのです!』
顔を青ざめさせながらも気丈に頷く少女。
覚悟を決めて母親に伝えようとすると……鏡からさらなる光が溢れてきた。
また助けてくれるのかと、先に出ていた角うさぎの方を見ると。赤みがかった金毛の角うさぎは困惑したようにフルフルと首を横に振っているではないか。
角うさぎさんも知らないことが起きているの?と、少女は少しだけ戸惑ったが、ミラお姉ちゃんからプレゼントされた鏡だから、きっとまた良いことが始まったのだと期待に目を輝かせる。
鏡面からの光が一層強さを増した次の瞬間!
小さな手鏡から、スポーン!と一匹の白いうさぎが飛び出してきたのだ!
空中で一回転、スタッと着地した白うさぎ。
『鏡を触媒にした転移は成功しましたね!
地上にくるのは久しぶりです!』
フンフンと匂いを嗅ぎ、辺りを見回すうさぎと、呆気に取られてまじまじと見ている角うさぎ。
少女の顔には笑顔が広がる。
「うわぁ!またうさぎさんだー!」
シュタッと右前足を挙げて挨拶をする白うさぎ。
その時点で普通のうさぎではあり得ない。
『ハイッ! うさぎさんですよう〜?
わたしは月神ルーナラーナ様にお仕えする玉兎と申します! わたしたちがお助けしますから安心してくださいね〜?
みんな〜! 早くおいで〜?』
玉兎が声をかけると再び鏡が光り、スポーン! スポーン! と次々と飛び出すうさぎ、ウサギ、兎!
最初のうちは綺麗に着地していたのだが、どんどんと飛び出る勢いに、着地する場所もなくなり積み重なっていくうさぎたち!
『退いてどいて!』『痛っ!』『むぎゅっ。』『あっ、ごめんなさい!』『重いです〜!』『みゅみゅみゅ⁈』
最後にスポーンとうさぎ山の上に降り立ったのは……周囲のうさぎよりもひと回り以上小さな子猫サイズの生き物。
茶色っぽい黄色の体毛に、猫のような耳とシマリスのような尻尾を持つ可愛らしい動物だった。
『あっ、連絡に来ていた地母神様の眷属が来てしまいましたよ⁈』『ミキューさんですね!』『困りましたね……。』『どうしましょう?』『みゅ?』
不思議そうに小首をかしげるそぶりはとても愛らしい。
が、この魔法生物が実は虹蛇並みの古参眷属であることはあまり知られていない。
『着いてきてしまったのは仕方ないですね!ここはお手伝いをしてもらいましょう!』『そうそう!そうです!』『そうしましょう!』
やっとこさ、折り重なったうさぎ山を解消して、整然と整列する玉兎たち。
その姿は多種多様で、長耳、たれ耳、長毛、短毛、色や模様も様々。その中から一歩、進み出るクリーム色のフワモコ長毛種が言う。
『今こそ、主様とおひいさまのご恩に報いる時!
まずは魔物たちを平らげ、その後はおひいさまの援護に向かうぜ!』『そうです!そうです!』『その通り!』『行きましょう!』『いざ、神獣変化!』
うさぎたちの体が光ったかと思うと、次の瞬間、そこには見目麗しい女性たちの姿が……。しかも、全員が下着姿かのような際どい格好である。
頭の上にはうさぎの耳、体をレオタード状に毛皮が覆い、手足を肘膝まで獣毛が生え、お尻にまん丸うさしっぽ。
『散開!』
圧倒的な身体能力をもって、次々と魔物を素手で屠っていく玉兎たち。
残されたのは半透明の角うさぎと少女、そしてミキュー。
少女はキラッキラと目を輝かせて応援しているが、角うさぎは空いた口が塞がらない。ミキューは……これは自分の出る幕はなさそうだと、傍観の構え。
『ば、バニーガール軍団……!』
『これで勝ったみゅ!』
……いや、そりゃあ勝ったでしょうけども。
(後でルーナ様を問い詰めなければ!)
と、戦う美女バニーガール軍団を見ながら心中に思う角うさぎだった。




