アルミラージ その37 死闘
……あれからどれだけの攻防を重ねたのですか?
何時間も戦っていたような気もするし、ものの数分しかたっていない気もするのです。
第十次までは覚えているのですけど、そこから先は記憶があやふやなのです。
キングの右足の傷はさらに深くなり、他にも左腿、右腕、右脇腹にも傷を与えたのです。
対してこちらは、右目を潰された以外は大きなケガはないのですが、MPがそろそろヤバいですね。
あと2、3回攻撃したら多分MPが尽きるのです。
さっきから魔法が飛んでこないので、おそらくキングは先にMPが尽きていると思うのです。
つまり身体強化も使えないはずなのですが、元々の筋力、体力が高いから、一撃でも喰らえば終わりなのは変わらないのです。
対して、こちらは魔力撃や身体強化が無ければ、キングには対抗できないのです。
そうなれば一方的にやられるだけなのですよ。
まあ、身体強化無しの素のスピードでも逃げるくらいは出来ると思うのですが。
今やもう互いに肩で息をしているのです。
それでもキングは楽しそうに笑っているのですよ!
まったく戦闘狂の考えることは分から……ないこともないのですか?
鍛えた力と技を全力でぶつけあえるのは、楽しいといえば楽しいのかもしれないのです。
だが、わたしの目的は戦いそのものではなく、生き延びることなのです。
できればのんびりすろーらいふが送りたいのですが、この有様ではまだまだ遠いのです……。
さて、もう一息頑張るのですかね〜。
もはや身体強化は攻撃の瞬間か緊急回避時にしか使わずにMPを節約しているのです。
素の素早さで、それでも緩急を付けてジグザグ走行にフェイントをおり混ぜて近づくのです。
当然キングの右足側に回りこみながら。
やつも迎え撃つべく大剣を振りかぶるのですが、右足に力が入らずたたらを踏んだのです。
勝機なのです!
なけなしのMPを振り絞って身体強化全開でキングに突っ込むのですよ!
フェイントをせずに真っ直ぐに走ると、キングがニヤリと笑ったのです。
まさか⁈
キングの身体をうっすらと赤い光が覆うのです。
これは身体強化なのです?
こちらを油断させるために今まで使っていなかったのですか⁈
振り下ろす大剣はギリギリ躱したものの、さらに着地点の地面が赤くなるのです!
これは無理なのです! 回避は不可能!
けど、まだ諦めないのですよ!
空中で体勢を変えて、突き出た槍を魔力角で斬り払うのです!
全て防ぐのは無理なので、数本、体を掠めるのですが致命傷は避けたのです。
そこへさらにキングの追撃が!
槍の中に挟まって、即座には動けないわたしに向かって振り下ろされる大剣。
わたしはわずかでも身を捩って直撃を避け、さらに魔力を通した角で受けようとしたのですが。
ついにMPが尽きたのです。
魔力を通さない角はただの頑丈な角なのです。
キングもさすがにMPが尽きたのか、大剣は赤く光らず、身体強化も無い速さなのです。
しかし、その純粋な力を込めた一撃に。
わたしの角が……。
たった一つの武器であり、わたしの角うさぎとしてのアイデンティティでもあった角が……。
……折れてしまったのです……。




