600万pv記念 間話 その52 ある踊り子 舞い歌うは新たなる神の誕生
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
本日は、600万pv記念で二話投稿しております。
こちらからご覧になった方は、目次からご確認くださいませ。
さて、この間話の登場人物である、踊り子とはいったい誰でしょうか?
答えは、CMの後!(嘘)
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
「おい、ねえちゃん!一曲頼むわ!」
その声と共に緩く投げられたコインを、振り向きもせず人差し指と中指で挟んでふわりと受け取ると、周囲から感嘆の声が上がりました。
ホホホ。踊り手たる者、普段の所作からも優雅でなければなりませぬゆえ、この程度は当然のこと。
ここは酒場。
日もとうに沈み、ランプの薄明かりのもと酒を酌み交わす男たちのうち、興がのったのか一人が依頼してきましたが、さて。
「承りましょう。なにかご希望はございますか?」
「なんでもいいが、明るくて勇ましいのがいいな!」
「されば、もっとも優しく、もっとも美しく、もっとも勇敢にして、もっとも新しき神について歌いましょうか。
その名は『ミルラーナ』。
一匹の角うさぎから身を起こし、苦難の果てに亜神へと登りつめた現世の英傑。
魔物でありながら、人の心を持つ優しき神獣。
その御名を讃えよ!」
連れの伴奏者に目配せすると、テンポの速い勇ましい序曲から弾き始めます。
かの姫神はその心根の優しさとは裏腹に、戦い続けた半生をお待ちですからね。
……………………
存分に歌い、舞い、踊る。
身を翻せば、長い飾り袖と深いスリットの入ったスカートが広がる。
もちろん、全力で歌い踊ることはしませんよ?
そんなことを普通の人間たちにしては、洗脳するのと変わりませんからね。
しかし、技芸を司る者として、けっして手を抜くことはいたしません。
ゆえに神としての権能はすべて封じ、体力も人と同じ肉体レベルにまで落とした上で、わたし自らの心と技でのみの勝負。久しぶりに心躍るステージですね……!
「月神の伴侶にして愛しの君。
もっとも弱きより成り上がりたるからこそ、弱き者の心をぞ知る。
その加護はあまねく罪なき者たちを守りたもう。
いざや、我ら祈りを捧げん。
その尊き御名に誉れあれ!」
両手を掲げて歌いきると、一瞬の静寂のあと万雷の拍手と歓声が。
息を整えながらゆっくりと手を下ろし、観客たちに礼をとります。
さらに多く飛んでくるコインを優雅に受け取り、取りきれぬ分は伴奏者に拾ってもらっていると。
最初に依頼をした人ですね。話しかけてきたのは。
「いや〜あんた凄いな!こんな見事な歌と踊りは、きっと王様だって見ちゃいまい!銀貨一枚じゃあ申し訳ないくらいだ!」
「ホホホ……。構いませぬよ?おかげで一席舞台ができましたゆえ。
追加の褒美もほら、この通り。」
手のひらに乗せて見せたのは、先ほど飛んだおひねりの数々。銅貨が多いが合わせれば銀貨数枚分はありましょうか。
「ハハハハッ!そいつぁ、よかった!
……それにしても、新しい神様か。噂は聞いたが本当の話なのかねえ?」
「疑われるのも無理からぬこと。
なにせ新たな神の誕生など、数百年ぶりの話でございますから。
ですけれども、逆を申せば数百年前には真にあったこと。それが今起こったとして、なんの不思議がございましょう。
あなた様も祈れば、なにかご加護を賜れるかもしれませぬよ?」
そう。
新たな神が生まれるのは、珍しくはあるが無い話ではありませぬ。
なにせ、ここにその証拠がおりますゆえに。
さてさて、この国でミラ様のことを広めるのはもう良いでしょう。信仰を集めるにも、まずは知られることから始めねばなりませぬからね。
次はいずこの国に参りましょうや?
上の方々からはもうそろそろ充分だと言われておりますが、堕ちた女神と戦うミラ様のため、ミラ様に恋する月神殿のためにも、もうひと頑張りはいたしたく。
……けっして、久方ぶりの地上で、ただ自由に歌い、踊りたいだけではございませぬよ?
答え・技芸神サラサ様でしたー!
(*^▽^*)
自分でもなんか気に入ってるキャラ。ほんのちょい役なんですけどね。
かつて、人間から昇神した技芸神。
お仕事にかこつけて、ちゃっかり地上を楽しんでいるようです。




