神兎 その85 結界越しの「あ・り・が・と・う」
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
『冒険者になりたいと都に出ていった娘がSランクになってた』の主人公の育ての親で、ある意味もう一人の主人公であるベルグリフさん。
アニメで見ると、声も合わさって落ち着いた大人の男性って感じでいいですよね。人との応対も柔らかく、良識にあふれた常識人です。
こういう大人になりたかったなぁ……。(^^;
自分は精神的に、高校卒業してからまったく成長してない気がします。
別のマンガで「雲をつかむような気持ちで、大人のフリをする」というセリフがありまして、どっちかというとこちらが近いですね。
兎も角、これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
その身に呪いを受け、まだらに黒く染まった体。
全身に巻きつく荊に傷つき、流れた血が黒く固まり。
それでもなお、転生したわたしを見て、泣いて喜ぶのですか……。
どんだけ人がいいのですか。
はやる気持ちを抑えるかのように、足早に結界の壁際まで来ると、跪き、深く頭を下げるのですよ。
ああもう!
だから、わたしが呪殺されたのは、あなたのせいじゃあないでしょうに!
オデットさんが頭を下げて謝る必要なんてないんですよ⁈
むしろ、わたしの方が感謝して頭を下げなきゃいけないんじゃないですか⁈
わたしも片膝をついて、目線を合わせるのです。
すると、気配を感じたのか顔を上げるオデットさん。
美の女神の眷属としてふさわしくキレイなお顔も、墨汁をたらしたかのように黒い染みが大小点々とついているのですよ。
……痛ましいですね。
この呪いを解くことはできるのですか?
『いくつか方法があるけど、可能ではあるね。
ただ、結界の中にいるままでは無理だし、仮に解けたとしても、女神にまたすぐに呪われてしまうだろうね。』
むーん……。
もうしばらくは我慢してもらうしかないのですか。
オデットさんは、わたしが片膝ついてることに驚いているようですね。
結界ごしでは言葉は通らないですか……。ならば!
わたしはゆっくりと口パクで言葉を紡ぐのです。
あ
り
が
と
う
すると、さらにびっくりして目を見開いたのです。
わたしはニッコリと微笑み、続けるのです。
(わたしが 再び この世界に 転生できたのは あなたが 祈ってくれた おかげなのです。
あなたの 献身に 感謝するのです。)
オデットさんは、ついに涙腺決壊して涙を流しながらも、頭をフルフルと横に振るのですよ。
(いいえ いいえ 感謝するのは わたしの方です。
捧げ続けてきた 祈りが 無駄ではなかったと 知ることが できたのですから。)
感動的な場面のはずですが、結界の壁を挟んでの口パク会話は、なかなかにシュールというか、不便なものですね!
念話使いたい〜。
(すぐに 助け出すので もう少しだけ 待っていて 欲しいのです。)
そう伝えたのですが、やはり首を横に振るのです。
(わたしのことは 捨て置いて くださいますよう。
それよりも どうか 今度こそ 月神様と お幸せに。)
そうはいくか!
恩人を放置した上で、幸せになんてなれるかってーの!
寝覚めが悪いのです!
(わたしは 転生して 亜神となったのです。
そして 神々と 契約して あなたの主 エルウィナスの 討伐を 命じられたのですよ。
だから 討伐が済めば あなたは 自由なのです。)
それを聞いたオデットさんは……目を伏せて、少しだけ涙をこぼしたのです。
驚きはしたものの、納得というか諦めというか。
悲しいけれど、そうなるのも仕方ないというか。
そういった感情が混ざって、涙が出たのですかね。
(そうなのですね……。
いつか この時が 来ると 思っていました。
それならば わたしも 主とともに 討ち取って くださいませ。
それが 最後の 贖罪と なりましょう。)
書いておいてなんですが。
この人たち、何語をしゃべってるんだろうか……?
ふ、雰囲気!
雰囲気で日本語っぽくしただけですからね?
きっと、この世界の共通語的な言葉を話してるんでしょう!
ルーナ様 (メタ)『……三千年間封印されていた白鳥が話すのは、三千年前の言語だと思うんだけど。
例えば、縄文人と現代人がまともに会話できるものかなぁ?』
シャラップ!(^◇^;)




