間話 その42 白鳥 永い祈りのその先に……
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
今朝も、書きかけの原稿を枕に討ち死に……じゃなくて寝落ちしておりました。
目が覚めてから仕上げたので、よりつたない作品になっているかもしれませんが、これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
……我が身を捧げ……伏して願い奉ります……
……ミラ様にかけられた……呪いが解けますよう……
……この世界から追放されたミラ様の魂が……再び輪廻の輪に戻られますよう……
……主様の罪が許され……神の御座に戻られますよう……
あれから、いったいどれだけの時が流れたのか……。
もはや時間の感覚など、はるか昔になくしてしまいました。
時々、肌にくいこむ荊の痛みだけが、まだ自分が生きているのだと、これが夢でなく現実なのだと教えてくれます。
まだ、わたしと主様は許されてはいないのだと。
ミラ様は……この世界の輪廻の輪に戻ってこられたのでしょうか…………?
結界の中に封じられている身では、外のことなど知りようもないのですが……。
あの時……婚儀の席へと向かう主様をお止めすることができていれば……。
いえ、せめて我が身を盾にして、ミラ様にかけられた呪いを受けていれば……。
主様も、ここまでの罰を受けることはなかったでしょうに……。
わたしたちが封印される前に、太陽神様はおっしゃいました。
『エルウィナス及び、その眷属たちよ。
今からお前たちを地に落とし、封じる。
自らが犯した罪を悔やみ、心から反省するのならば、遥かな時の彼方で封印は解けるであろう。』
あれから長い長い時が流れたはずですが、封印が解ける気配はありません……。
むしろ、主様から溢れる瘴気を浴びて、仲間たちはその姿を変じていきました。
そして、わたしの兄もまた……。
瘴気に侵される現状を打ち破るために、わずかに緩んだ封印を抜けて外界に向かった兄ですが、おそらくはすでに亡き者になっているのでしょう。
つい先日、うっすらと感じていた兄との繋がりが、ふっつりと切れたような気がしたのです。
わたしたち兄妹は双子の白鳥として、同時に生み出された存在。
その魂の絆とも呼べるものが消えたのです。
……わたしは罪深い女です。
兄の計画を聞き、上手くいくはずがないと思っていたのに止めなかった。兄の主様への想いを止められなかったのですから。
……いいえ、いま考えるべきことは、わたしの後悔ではありませんね。ただ一心に祈りましょう。
……我が身を捧げ……伏して願い奉ります……
……ミラ様にかけられた……呪いが解けますよう……
いつものように、跪き祈りを捧げていると……誰かに見られているような気が……そんなはずはないのですが。
この瘴気に満ち満ちた結界の中を見通す者などいないでしょうし……。
主様はじめ、共に封じられた仲間たちも今は眠りについています。
なのに、兄にも似た繋がりを感じるのです。
あなたは、いったい誰?
なぜ、わたしを見つめているの?
視線を感じる方向を向いて、目を凝らしても見えるのは渦巻く瘴気だけ。
騒ぐ胸を抑えて、足を運びます。
何かが変わる……この停滞した限られた世界を変えてくれる……そんな気がするのです。
体を動かすたびに突き刺さる荊。
痛みに耐えて進み、境界が見えてくると……結界の外に人影?
さらに足を進めながらも、目頭が熱くなってきました。
そんな馬鹿なことがあるはずが無い……と否定する言葉が頭の中に浮かびます……。
ですが!
長い間、祈り続けたお方を見間違えるはずありません!
ああっ……良かった……!
再び、この世界に転生することができたのですね……!
お喜び申し上げます!ミラ様!




