特別間話 玉兎と玉兎と玉兎と神兎 みんなでお月見の準備です!
今日は500万PVを記念して追加投稿いたします。
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
『そうそう、そうです。』『感謝いたします!』『ありがとうございます!』『こんなにつたないのにねぇ?』『それは言わない約束よ?おとっつぁん。』『誰がおとっつぁんですか!』
こ、これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
『『『ありがとうございました!』』』
十数匹の玉兎が、厨房らしきところでせっせと作業をしている。
石の臼に蒸した米を入れて餅つきをするもの。
粉を挽いて、水で固め、丸くするもの。
その丸めた団子をお湯で茹でるもの。
作業の手は止めないままに語るのは、もちろん自分たちの主人である月神とその伴侶のことである。
『今年もお月見の季節がやってきましたね。』『そうそう。』『そうですそうです。』『楽しみですね!』『おひいさまは喜んでくれるでしょうか?』『主様も!』
うさぎたちが小さなエプロンを身につけ、これまた小さな前足を器用に動かしてワチャワチャと、またはぴょこぴょこと動き回る姿は非常にファンシーで、見る人が見ればあまりの可愛さに立っていられないかもしれない。
『それにしても……おひいさまは以前とお変わりなく、お美しくあられましたねぇ……。』
一匹がホウっとため息混じりに感嘆すると、次々と賛同の声が上がる。
『そうそう!そうです!』『その通り!』『主様にはもったいないほど!』『それは少し言いすぎでは?』『主様もお美しいですけど……中身が残念ですからねぇ……。』
うんうんと頷く一同。
玉兎たちはまだ知らない。
その「おひいさま」の中身も、実は大変に残念であることを。
ある意味、似たもの同士の仲良し夫婦になるであろうことを。
または、どつき漫才夫婦か?
『月神宮においでになられたら、また撫でてもらえるでしょうか?』『撫でてもらいたいですねぇ……。』『ほんにお上手でしたから。』『前よりお上手になられましたよね?』『そうそう、その通り!』
今度は手を止めて目を細め、うっとりとする一同。
と、厨房の入り口に現れるや崩れ落ちた人影が。
「なんですかここは……。シルバ◯アファミリーの台所ですか?」
言葉の意味はよくわからないが、大好きなおひいさまの姿を見て喜びの声をあげる玉兎たち。
『おひいさま!』『本当だ、おひいさまです!』『撫でてください、おひいさま!』『あっ、ずるいです!わたしが先です!』『今日はどうされたのですか?おひいさま!』
ワチャワチャと聞かれ、体勢を立て直してから答える神兎。
「えーっとですね?ルーナ様から、先輩方がお月見のお団子などを作られていると聞いてですね?
わたしも混ぜてもらえないかと思ってですね……。』
『そうなのですね!』『もちろん大歓迎です!』「そうそう、その通り!』『さあどうぞこちらへ!』
厨房の中へと案内されるが、サイズがうさぎベースな厨房に人型では動きづらいようだ。
「……わたしも元の姿の方がよさそうですね。」
言うや、人化を解除して神兎としての姿に戻ると……。
白銀に輝く一対の龍の角と黄金の翼、モッフモフの狼のしっぽ。
深紅の瞳にやや長めの艶やかな毛並みという、奇態な、けれども愛らしいうさぎの姿を初めて見た玉兎たち。
その目の色がギラリと変わった!
『さて、これでサイズは問題ないですよね?
でも、この姿の前足は不器用なので、色々と教えて欲しいのですが……ムギュッ!』
ああ、なんということでしょう。
玉兎たちは次々と人化や神獣変化して人型になると、うさぎの姿のおひいさまを代わるがわる抱き上げては撫で回し始めたではありませんか!
「ああっ!なんとお可愛らしいお姿でしょう!」「そうです、そうです!」「その通り!」「おひいさまがわたしたちと同じ姿に!」「同じといっても角や、翼がありますけどね?」「そんなことでおひいさまの魅力は損なわれません!」「むしろ、より愛らしいですよね!」
おぶおぶと、撫でくりまわされる神兎。
玉兎よりも格上の存在のはずだが……威厳はまったく無いようだ。
『ちょ、ちょっと待って、ちょっと待って!
ストップ!気持ちいいですけどストップで!
お団子!お団子を作らないとお月見ができないのですよ〜!』
ミラの叫び声もむなしく、玉兎たちが納得するまで撫でられ続けたのでした。まる。
書いていて、ふと思いました。
……この人(?)たち月にいるのにどうやってお月見するんだろう?
(・・?)
お団子を飾って、みんなで月の地面を見るんだろうか。地味。
というかこの場合、見られる側だから「お月見」じゃなくて「お月見られ」では?




